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JRIレビュー Vol.5,No.77

人生100年時代の家計モデル

2020年05月13日 飛田英子


長寿化が進むなか、社会的・経済的弱者というこれまでの高齢者像が一変、今では平均レベルで人生を享受する主体に。「人生100年時代」に移行するなか、将来の高齢者もこうしたポジティブな生活を送ることができるのか。そこで、世帯主年齢が80歳時の家計収支を生年別に比較。

対象とする高齢者世帯は夫婦二人世帯と男女それぞれの単独世帯の3パターン。収入は基本的に65歳から受給する年金(厚生労働省「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し―2019年財政検証結果―」の経済ケースⅣ)。一方、支出については、消費支出は現在の水準と同じと仮定(「家計調査2018年」)、非消費支出は年金収入や医療・介護給付費から直接税と医療・介護保険料を計算。この基本ケースに加え、年金受給を70歳に繰り下げるケース、経済が高成長を続けるケース(経済ケースⅠ)についても比較。

結果を整理すると、次の3点
第1に、基本ケース、および年金受給年齢繰り下げケースでは家計収支に大きな世代間格差が確認されない一方、高成長を続けるケースでは格差は解消の方向に。このことは、逆に経済が下振れた場合には世代間格差が拡大することを示唆。
第2に、基本ケースでは家計収支がすべての世代で赤字である一方、年金受給年齢繰り下げと経済高成長のケースでは家計収支は黒字に。ただし、個人の健康状態や経済には不確実な要素が多いことに留意が必要。
第3に、世帯パターン別には女性単独世帯の家計が最も厳しい状況に。これは就労時の賃金水準が低く、年金受給額も少ないため。就職氷河期世代に象徴されるように、就労時期が遅れて勤労年数が短い場合も年金受給額が少なくなるため、男女問わず同様の結果になると推察。

人生100年時代を安心に迎えるために必要な対策や対応を考察すると、以下の通り。
第1は、自助強化に向けた取り組みと環境整備。個人は現役時から将来に備えて資産形成や健康管理に取り組む一方、政府は、個人のこうした取り組みを支援すると同時に、低年金者や身体的弱者の自活をサポートする環境を整備する必要。
第2は、大胆な給付費抑制を実現する医療・介護保険制度の抜本改革。高齢者家計を圧迫する医療・介護保険料の増加を抑えるには、高齢者の自己負担引き上げでは限界。必要性や費用対効果をはじめ総合的な観点から給付内容の妥当性を精査することが求められる。
第3は、エイジレスな医療・介護保険制度への再構築。年齢ではなく、負担能力やニーズに応じて受益・負担する制度への再構築は、世代間不公平感の解消や負担に対する理解を回復・確保していくために不可欠。
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