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動画を活用したESG情報開示

2020年03月24日 黒田一賢


 ESGに関する情報を動画にまとめて、ウェブサイトやYouTubeチャンネルに掲載する企業が増加してきている。筆者が2月末に調査したところ、日本の上場企業の時価総額上位100社でESG関連動画を掲載している企業は20社弱に上った。小売など一般消費者になじみの深い業種だけでなく、化学や機械など企業間取引がメインの業種に属する企業も積極的に動画を作成していた。この中にはいわゆる会社紹介動画や採用活動向け動画のみを掲載している企業は含まれていない。

 これまでESG情報は、ウェブサイトや報告書で文字と図表で表現することが一般的であった。しかし、動画による情報発信には少なくとも二つのメリットがあることが、その増加の背景にあると考えられる。

 一つは、視聴者の関心のあるテーマを効率よくインパクトを持って伝えられる点である。通常動画は3~5分程度にまとめられており、当然表現できる内容も絞られる。通常の報告書では内容の網羅性が焦点となるが、中には膨大な情報を含むあまり、300~500ページの報告書も散見される。動画では報告書よりもテーマを限定し、かつビジュアルを中心に分かりやすく、その重要性が強調させることが可能である。例えば、ある製薬会社は自社の社会的責任に関する動画を作成している。報告書のように網羅的な内容となっているわけではないものの、投資家を含めたステークホルダーに企業の存在意義を訴えるには効果的なものとなっていた。また、社員による対談の形式を取ることで、その存在意義が社内に浸透していることも強調する。

 もう一つは、ステークホルダーの生の声を伝えることができる点である。もちろん報告書でもステークホルダーからのコメントを読むことができるものの、動画で実際に話を耳にし、表情の変化を目にする方が印象深い。例えば、ある建設会社は顧客企業のビルの環境効率性を向上させたという事例を動画で取り上げているが、顧客である銀行の担当者にその有用性を語らせることで、この事業の取り組み意義を強調している。

 また、社会貢献活動は範囲が多岐にわたり、かつ地域に根差した活動も多いため、動画化しやすいテーマと言える。小学校への出張授業や海外での地域貢献の様子を動画化しているケースが多い。社会貢献活動はそれ自体では投資家への訴求力はさほど高くなく、ともすれば会社資金の無駄遣いと見られかねない。そこで、このような動画を作成することによって、社会貢献活動が将来の市場、消費者の開拓につながっていることを示し、投資家にその意義を知ってもらう狙いもあると推測できる。

 まだ数は少ないものの、社内制度を紹介する目的の動画を配信する企業も出てきている。例えば、ある通信会社は従業員の統合失調症の男性が短時間勤務制度を利用した体験談を動画化した。働き方改革が叫ばれる中、様々な施策が各社で展開されているものの、実際の利用実態については情報開示に二の足を踏む企業も多い。そうしたなかで、実際に制度を利用した社員の発言は説得力があり、採用希望者の好感につながることが期待できる。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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