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リサーチ・アイ No.2019-063

新型コロナ問題で急減した宿泊・飲食需要~100万人分の雇用削減圧力で失業率が1.4%ポイント上昇~

2020年03月23日 成瀬道紀


新型コロナの感染拡大を受けて、訪日外国人客が急減しているうえ、外出・消費の自粛も拡大。とりわけ宿泊・飲食業では、インバウンド消費への依存度が大きいうえ、消費自粛の影響を受けやすいことから、業績悪化が懸念。東日本大震災後にも他業種を上回る大きな落ち込み。

まず、宿泊・飲食ともにインバウンド消費は9割減と予測。わが国政府は、中国・香港・韓国・欧州・米国など訪日客の多い国・地域に対して入国制限を課しているうえ、世界の多くの国でわが国を含む海外への渡航を制限。

内需については、宿泊業は、2009年に関西で新型インフルエンザが流行した際を参考に30%減と予測。当時、修学旅行客を含む観光客やビジネス客のキャンセルが相次ぎ、京都府の邦人延べ宿泊者数が急減。一方、飲食業は、東日本大震災が発生した2011年3月の落ち込みを基に15%減と予測。

この結果、新型コロナのマイナス影響が最も深刻化すると思われる3~4月には、売上高は、宿泊業で約43%(月約2,400億円)、飲食業で約19%(月約3,000億円)減少することに。

宿泊・飲食業は、他業種と比べて売上高人件費率が高いため、売上が大幅に減少した場合、人件費が大きな重荷に。このため、売上急減を受けた収益悪化を緩和するために、雇用調整を実施する公算大。今回の混乱が長期化した場合は、労働需要の減少にあわせ、最大で売上減少率(宿泊43%、飲食19%)と同率の労働投入(総労働時間)を抑制する可能性。

企業はまず、雇用の削減の前に痛みの少ない残業代の削減で対応する見込み。もっとも、総労働時間に占める残業時間(所定外労働時間)の割合は6%前後に過ぎないため、残業削減に加えて、人員削減の実施も避けられない状況。

人員削減は、正規社員よりも削減のハードルが低い非正規社員から行われる公算大。宿泊・飲食業は、パート・アルバイトなどの非正規社員の比率が高いため、人員削減による総労働時間の抑制は非正規社員が中心に。残業をゼロとしてもなお不足する総労働時間の削減分を、非正規社員の人員削減によって実施したとすると、最大で宿泊業で約33万人、飲食業で約66万人、合計約100万人の雇用が消失する計算。これは、宿泊・飲食業だけで、全体の失業率を1.4%ポイント押し上げるインパクト。

パート・アルバイトのほとんどは、週の所定労働時間が20時間未満で、雇用保険の被保険者ではないため、原則、雇用調整助成金や失業手当の対象外。宿泊・飲食業は、パート・アルバイトによる雇用の16%ものシェアを占めるだけに、雇用保険未加入者に重点を置いた雇用対策が急務。具体的には、政府は、今回の新型コロナ問題を受けた特例措置として、緊急事態宣言を発出した北海道で、雇用調整助成金の対象を雇用保険の未加入者にも広げているが、雇用維持の観点から、この措置を全国的に実施することを検討する必要。それでも一定程度の失業は発生するため、雇用保険未加入の失業者への生活支援策なども課題に。

新型コロナ問題で急減した宿泊・飲食需要~100万人分の雇用削減圧力で失業率が1.4%ポイント上昇~(PDF:309KB)
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