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リサーチ・アイ No.2019-055

マハティール首相辞任によるマレーシア経済への影響~通貨リンギの下落や、消費、輸出の減速で低迷長期化のリスク~

2020年02月25日 塚田雄太


2020年2月24日、マレーシアのマハティール首相が突如、辞任を発表。与党連合・希望連盟の内部対立による政治混乱が理由。今後は、下院で次期首相が指名される予定。もっとも、与党連合は下院で過半数を下回っており、政治混乱の短期収束は困難な状況。これにより、2017年7~9月期以降の減速傾向が長期化するリスクが増高。影響は、特に以下の3点で表れる見込み。

第1に、通貨リンギの下落とそれによる輸入インフレを受けた消費の減速。2018年5月の下院議員選挙時に、マレーシアリンギは一時的に大幅下落したものの、強いカリスマ性をもつマハティール氏に対する信頼感が為替市場の混乱を抑えた経緯。今回、マハティールプレミアムが剥がれることで通貨リンギが大幅減価し、輸入インフレと民間消費減速を招来する可能性大。ちなみにマレーシア財務省の推計によると、通貨リンギが対ドルで1%下落すると、インフレ率を0.34%押し上げ。

第2に、新型肺炎に対する経済対策の遅れ。今回の新型肺炎では、マレーシア経済も大きな負の影響を受けつつある状況。政府は景気刺激策を検討しているものの、首相辞任で対応の遅れは不可避。また、中銀は足元で利下げしたものの、上述のように為替市場が混乱すれば、今後の追加利下げは困難に。

第3に、パーム油のインド向け輸出の回復の遅れ。インド政府は、新国籍法などに対するマハティール首相の批判を理由に、2020年1月初より事実上同国からのパーム油輸入を禁止。インドは同国の最大のパーム油輸出先であり、この影響から2020年1月のパーム輸出量は全体で前年同月比▲27.8%、インド向けが同▲85.2%減少。最終的にはマハティール首相の辞任は関係改善のきっかけになると期待されるものの、早期の安定した次期政権の発足が困難ななか、当面関係修復へ向けた動きは見込めず、インド向けパーム油輸出は不振が続き、同国輸出全体の足かせに。

マハティール首相辞任によるマレーシア経済への影響~通貨リンギの下落や、消費、輸出の減速で低迷長期化のリスク~(PDF:266KB)
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