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CSRを巡る動き:ダボス会議を席巻した気候変動リスク

2020年03月02日 ESGリサーチセンター


 今年も年初から、国内では記録的と言われる暖冬傾向が続いています。海外に目を転じても、オーストラリアでなおも続く森林火災など、気象現象が私たちの生活に影響を与えるような事象が、様々なかたちで発生しています。また、2019年を振り返ると、日本列島では各地で気象による災害が相次いで発生しました。特に東日本では、15号・19号と続けて上陸した台風により、洪水・停電などの甚大な被害が発生しました。

 被害の大きさは統計データにも表れています。農林水産業への被害は3,000億円を超え、保険金の支払額は2年連続で1兆円を超える見通しです。海外では、ヨーロッパを襲った記録的熱波や、アメリカ西部やアマゾンで発生した森林火災などが大きな被害を及ぼしました。世界全体では、気象に関連した被害額が、毎年平均12兆円を超える規模に上っています。

 このような気象災害の拡大には、地球温暖化および気候変動が大きく影響していると見られており、気候変動への懸念は近年、世界全体で急速に高まっています。それを最も顕著に表しているのが、世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」に併せて公表されている「グローバルリスクレポート」でしょう。ダボス会議については、本連載でも以前に触れていますが、世界の政財界・国際機関・市民団体などのリーダー約3,000名が参加して、様々な国際的課題について議論や情報共有をする会議で、今年で50回目を迎えました。

 今回の「グローバルリスクレポート」は、「炎上する惑星」とタイトルがつけられ、これまで以上に気候変動への懸念がにじみ出た内容となりました。レポートの巻頭には恒例のリスクランキングが掲載されていますが、「緑色」で示された環境カテゴリーのリスクの占有度が年々高まっていることが、ビジュアルとしても目を惹きます。項目としては、4年連続で最も発生可能性が高いリスクに選ばれた「異常気象」、影響が大きなリスクには「気候変動緩和・適応への失敗」と、いずれも気候変動に関連したリスクがトップに選ばれています。リスクとして気候変動を捉えることが、世界共通の認識となり、さらに意識が高まっていることを示した結果といえるでしょう。

 また、ダボス会議に集まった世界のリーダーからは、気候変動に関する発言も相次ぎました。一躍、時の人となったグレタ・トゥーンベリさんへの注目もさることながら、マイクロソフトなど世界的な企業経営者から示された「カーボンネガティブ」という新しいアプローチにも注目が集まりました。これは、従来の脱炭素やゼロカーボンに留まらず、将来的に温室効果ガスを吸収する技術によって、温室効果ガスの排出量をマイナスにする取り組みです。例えば、地中に二酸化炭素を吹き込んで吸収させるCCSや、植物の光合成と同じ化学反応を起こして二酸化炭素を吸収する人工光合成などの技術は、カーボンネガティブを達成する手段です。現状では、費用の大きさから実用段階には至っていないものの、今後このようなアプローチが拡大すれば、開発への資金投資が進み、市場が拡がっていくことが期待されます。

 そして、グレタさんも指摘している「科学的アプローチ」という観点では、国際的な科学的知見として認知されているIPCCが公表する最新版の報告書が、いよいよ2021年から順に公表される予定となっています。今年は、公表を前にして様々な関連情報も得られることでしょう。科学的知見をベースとしつつ、新たな技術開発も加えていかに気候変動リスクを低減させていくのか、ますます具体的な取り組みへの緊急性が高まっているのではないでしょうか。

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