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JRIレビュー Vol.3,No.75

【米中対立における中国とインドの立ち位置】
世界経済の潮流を左右するインドの対米・対中経済関係

2020年03月23日 熊谷章太郎


米中対立が長期化の様相を見せるなか、今後、国際政治経済のパワーバランスはインドの本格台頭に伴い一段と複雑化すると見込まれる。そのため、世界経済の動向やアジアのサプライチェーン再編の行方を展望するうえで、米中関係とともにインドの対中・対米経済関係を併せて把握することが重要である。

アメリカは貿易、投資、援助、安全保障などの分野を中心にインドにとって極めて重要なパートナーである。しかし、近年は印米双方の保護主義の強まりなどを背景に通商対立が深刻化しつつある。今後については、①印米双方の関税引き下げ、②インドのサービス業の外資規制緩和、③アメリカのインド人労働者の受け入れに関する規制緩和などに向けた通商交渉が進展するかが印米経済関係の行方を左右する。これらは双方にとって実現ハードルが高いため、印米間の通商対立は解消されず、貿易・投資拡大の阻害要因となり続けると見込まれる。ただし、印米はともに安全保障上の分野で対立要素を抱える中国に対抗するため連携する必要があることから、二国間関係の深刻な悪化につながりかねない経済対立は回避されると予想される。

中国はインドにとって最大の輸入相手国・貿易赤字国であり、近年は援助面でもプレゼンスを高めつつある。インドは対中貿易赤字の拡大への懸念を背景に貿易面では保護主義的な姿勢を強める一方、輸入代替、製造業振興、雇用創出に向けて中国製造業の対印投資を促進している。中国企業もインドの需要取り込みに向けて対印投資の拡大に前向きな姿勢を示しており、今後は投資面でも中国のプレゼンスが高まっていくと見込まれる。しかし、在印中国企業の現地調達率の引き上げには時間が掛かるため、対中貿易赤字は当面拡大が続く公算が大きい。印中間の貿易不均衡の一段の拡大に対するイ
ンドの不満、インド経済の本格台頭に伴う印中間の覇権争い、安全保障上の対立、などがきっかけとなり、先行き印中経済関係の「揺り戻し」が起きる可能性がある。

わが国企業は中国企業のインド進出を念頭に印中両睨みでアジアビジネスを展開すべきである。また、印米中とバランス外交を展開するASEANからの輸出を通じた事業展開を強化することで、大国間の経済関係の変化への対応力を高めるべきである。わが国政府に対しては、アジアの安定と自由貿易拡大に向けた取り組みを推進することで、在アジア日系企業のビジネスを支援していくことが求められる。
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