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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.20,No.76

高質化・広範化を目指す中国のフィンテック政策

2020年02月19日 藤田哲雄


中国のフィンテックは比較的自由な規制環境のもと、急速に発展して国民の日常生活に浸透したが、政府は2015年頃よりフィンテック業者に対する監督体制や規制の整備を進め、フィンテック業者の質の向上に取り組んでいる。

個人情報保護に関しても、中国は単独の包括法が現時点では存在しないものの、2017年6月に施行されたネットワーク安全法により、個人情報の取得や移転に関する規制が法律で定められ、フィンテック発展のための法的な環境整備が進んでいる。

一方で、中国政府は近年、フィンテックの発展を主導しようとする動きを見せている。中央銀行である中国人民銀行は、内部にフィンテックの推進機関を設置したほか、「中国の金融産業における情報技術開発のための第13次5カ年計画」(2017年6月)において、①金融サービスの基盤の統合、②ネットワークセキュリティ保護システムの改善、③金融イノベーションの促進、④金融分野における標準化の推進、⑤フィンテックのガバナンスシステム最適化、という5つのタスクを明示した。

2019年8月に発表された「中国のフィンテック発展計画」においては、中国政府が金融サービスのレベルアップのみならず、「一般産業への応用」「金融包摂」「金融リスクコントロール」といった、フィンテックの応用範囲の拡大を主導する姿勢が明示されている。フィンテック発展計画に示された27個のアクションプランでは極めて高度な内容が具体的に提示されており、今後2年間の実施状況が注目される。この計画での目標が達成出来れば、中国はリテール分野のサービスだけでなく、企業金融や企業経営などでもフィンテックで様々な仕組みを作り変える可能性がある。

中央銀行デジタル通貨DCEPの研究も進んでおり、深圳などで実証実験が開始されている。DCEPのコンセプトは、当初は小口の支払い手段として利用されることを想定しており、市中銀行を介した2層構造で市民に提供される。DCEPは、人民元での決済コストを低下させることから、中長期的にみれば、人民元の国際的地位の向上に資すると考えられる。
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