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ONE RACEに思う、競技の無観客・遠隔視聴が進む未来

2020年01月17日 時吉康範


 先日、新国立競技場のオープニングイベントを観覧してきた。
 数あるイベントの中で興味深かったのが、ONE RACEだ。

 ONE RACEは、オリンピック選手、パラリンピック選手の男女計6名の混成チームによる4チーム対抗の、1人のランナーが200mずつ走り、バトンを受け渡すリレー競技だ。4チームのうち2つはTEAM JAPAN、2つはTEAM WORLDで、TEAM WORLDの一員としてウサイン・ボルトが出場して話題になったエキシビジョンマッチである。

 筆者が興味深かった理由は、このレースが「国をまたぐリレー」だったことだ。TEAM WORLDの2チームは、第4走者までは海外(それぞれ米国と英国の会場)で走り、日本にいる第5走者にバトンをつなぐ。第4走者が所定の距離を走り終えると第5走者のバトンが光って知らせる仕組みである。イメージは、ドラえもんの「どこでもドア」で第4走者が日本に突然登場して第5走者にバトンを渡すことをバーチャルに実現したようなものだ。
 なんとまあチャレンジングな試みだろうか。記念すべきオープニングイベントでは、失敗したくない気持ちが先に働くだろうに。未来感満点だ。そのチャレンジ精神に敬意を払いつつ、果たしてうまくいくものかしらとドキドキしながら待っていた。というのは、「バトンパスはタイムラグなく伝えられるのか」などの技術面や「走者が目の前にいないのに観客は盛り上がるのか」という演出面への懸念、いやいや、それ以前にそもそも「何が起きているのか観客や視聴者は理解できるのか」という疑問は瞬時に思い浮かんだからだ。

 そうした懸念や疑問と同時に思い出したのは、無観客競技に関するスキャニングマテリアル(未来の変化の兆し情報)である。わが国の無観客競技にはミッドナイト競輪がある。深夜に競走を実施するもので、近隣に迷惑がかからないように無観客とし、車券は電話・インターネットによる投票、競走の模様はインターネットなどによる放送としているものだ。無観客競技のメリットには近隣への対策だけではない。人が観覧にやって来ることに備えるインフラコスト・ランニングコストが不要になる点は大きいと思う。さほど観客が来ないのにインフラを維持せざるを得ない場(じょう)にとっては大助かりだろう。むしろ、観客に来て欲しくないと言い切っても不思議ではない。

 さて、ONE RACEは滞りなく終わった(ように見えた)。しかし、残念なことに予想通り、レース自体では観客の盛り上がりはなく選手入場が最も盛り上がった、いわゆる"出落ち"であったが、これは仕方がない。ナイストライだった。
 筆者の次の興味は、このレースは「現地観戦ではなく遠隔視聴だったらどのように映るのだろうか」だった。よって、このイベントを放送するテレビ番組をあらかじめ録画しておき帰宅してすぐ観た。結果として、テレビでも伝わったとは言い難い出来だったが、現地観戦よりはるかに分かりやすかったことは確かだ。その大きな要因は、画像がレースをチーム別にコマ割していたこと、レースに関連する情報が同じ画面で提供されていたことだった。
 ということは、テレビよりも画面設計の自由度が高そうなインターネット放送の方がさらに分かりやすく伝えることができそうだ。

 今後普及が予定されている(ローカル)5G・6Gでは、より多くの情報を同時に伝えることができるようになる。ONE RACEのように時空を越えた、あるいは、デジタル技術が活用された先鋭的な、リアルな競技の観戦を楽しむには、リアルに観戦するよりもむしろ、情報がたくさん詰めこまれたバーチャルな表現を通して視聴する方が適しているとの結論に至った。
以 上

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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