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リサーチ・アイ No.2019-047

米中通商交渉第一段階合意の目標達成は困難~ 新型コロナウイルスの流行が新たな障害に ~

2020年02月04日 橘高史尚


1月15日、米中は通商交渉の第一段階合意文書に署名。その骨子は、米国は対中関税第4弾の税率を引き下げる一方、中国は対米財・サービス輸入を大幅に拡大。米国の輸出拡大には数値目標が設定されており、その規模は、2020年が19年対比約900億ドル増(GDP比0.4%、19年の財・サービス輸出は日本総研見通し)、21年が20年対比466億ドル増(同0.2%)。

もっとも、米国の対中輸出の拡大については、供給・需要両面で懸念が存在。まず、米国の供給力をみると、18年半ば以降、設備稼働率の低下が続くなど、ある程度の生産・輸出の拡大余地はあるものの、歴史的な人手不足が機動的な生産拡大の制約要因に。

需要面では、中国経済の減速が懸念材料。過剰債務問題や米国の既往対中関税が景気の重しとなっているほか、新型コロナウイルスの流行が新たな障害に。流行終息に向け、中国政府が対策を講じているものの、家計消費や企業活動の一時的な停滞は避けられず。また、米国への中国人観光客の減少を受け、米国のサービス輸出に計上されるインバウンド消費が減速する恐れ。2003年のSARS流行時と同様に、中国人観光客が3割減少すれば、インバウンド消費が約100億ドル縮小する公算。第一段階合意に基づくと、20年のサービス輸出は19年に比べ50億ドル程度増やす必要があるものの、目標とは裏腹に前年割れとなる可能性も。

以上を踏まえ、米国の対中輸出の先行きを展望すると、第一段階合意の数値目標の達成はもとより困難であり、新型コロナウイルスの流行が長期化すれば、大幅な目標未達となる恐れ。

米中通商交渉第一段階合意の目標達成は困難~ 新型コロナウイルスの流行が新たな障害に ~(PDF:226KB)
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