リサーチ・フォーカス 2019-035
韓国の半導体産業の「脱日本化」の行方-日本の対韓輸出管理強化の「意図せざる」結果
2020年02月03日 向山英彦
本稿では、昨年の日本政府による対韓輸出管理強化(特定品目の個別輸出許可への切り替え、ホワイト国からの除外)後に、韓国が取り組む輸入先の多角化や国産化など「脱日本化」の現状を概観したうえで、日本企業の課題を検討する。
昨年7月4日に包括輸出許可から個別輸出許可に切り替わったのは、最先端のフッ化ポリミイド、EUV(極端紫外線)向けフォトレジスト、フッ化水素である。
フッ化水素に関しては、高純度の液体フッ化水素の輸出が許可されるまでに多くの時間を要したため(11月1件、12月1件)、韓国の対日輸入額が8月以降急減した。この間に、台湾からの輸入額が大幅に増加した。
また、フォトレジストの対日輸入額は8月から10月にかけて減少したが、11月に増加に転じた。輸出許可の対象になったのが一部で、しかも8月に許可されたため、減少幅は限定的にとどまった。注意したいのは、この間にベルギーからの輸入(輸入先はJSRの合弁企業)が急増したことである。
輸入先の多角化が進み始めた一方、韓国での国産化の動きも広がっている。韓国の半導体メーカーが製造工程の一部に国産フッ化水素を使用し始めた。また、シリコンウエハーの生産で世界第3位の台湾系企業が韓国で増産するほか、デュポン(米国)が今年1月、EUV向けのフォトレジストを生産する計画を発表した。
韓国では今後、半導体産業でクラスタ化を推進する計画があるため、現地生産する企業に有利となる。日本のサプライヤーは韓国での動きに注意を払いながら、今後の韓国ビジネスのあり方を検討していくことが必要となっている。
韓国の半導体産業の「脱日本化」の行方-日本の対韓輸出管理強化の「意図せざる」結果(PDF:732KB)
