リサーチ・アイ No.2019-045
米中合意第一弾による欧州製造業への影響― 輸入代替による欧州景気への影響は限定的 ―
2020年01月29日 高野蒼太
米国と中国は1月15日、通商協議の第一弾合意文書に署名。骨子は、中国が米国からの製造業製品の輸入を、2017年対比で20年は329億ドル、21年は448億ドル増加させること。
懸念されるのは、中国が欧州からの輸入分を米国に代替する可能性。合意に含まれる製造業製品の中国の輸入元別シェアをみると、航空機や医薬品、自動車といった品目では、米国とEUが大半。また、中国の品目別輸入のEU各国の割合をみると、製造業全体ではドイツ、航空機ではフランス、自動車では英国やイタリアなどのシェアが大。
中国が米国からの輸入積み増し分の全てを、EUからの輸入を減らすことで対応すると仮定した場合、EUの輸出減少幅はGDP比で0.2%前後となり、特にドイツ・フランスで影響が顕著。もっとも、実際には、中国は輸入総額を増加させるとみられるうえ、合意内容が完全に履行されるかどうかも不透明な状況。また、規制や技術的な制約から、医薬品や航空機などでは大規模な代替は困難と予想されるほか、自動車などの一部製品は、中国の消費者の嗜好に左右される側面が大。これらを踏まえ、大幅な輸入代替が起こる可能性は低いと判断。そのため、今回の米中合意第一弾による欧州景気への負の影響は、限定的となる見込み。
米中合意第一弾による欧州製造業への影響― 輸入代替による欧州景気への影響は限定的 ―(PDF:197KB)
