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CSRを巡る動き:日本銀行が「気候変動に関する金融当局ネットワーク」に加盟

2020年01月06日 ESGリサーチセンター


 2019年11月28日、日本銀行の黒田東彦総裁は、パリ・ユーロプラス主催のフィナンシャル・フォーラムの場で、気候変動に関する金融当局ネットワーク「NGFS(Network for Greening the Financial System)」に参加することを発表しました(注1,2)。なお、金融庁は日銀に先んじて2018年6月6日に参加を公表しています(注3)。

 NGFSは、その名の通り、気候変動リスクに対する金融監督上の対応を検討し、グリーンファイナンスを推進するために、有志の中央銀行および金融監督当局によって2017年12月の気候変動サミット(One Planet Summit)の際に設立されたものです。当初はイングランド銀行、ドイツ連邦銀行、フランス中央銀行、オランダ中央銀行、スウェーデン金融監督機関、シンガポール通貨金融庁、中国人民銀行、メキシコ中央銀行の8組織が先導役となりました。2018年1月24日には、第1回会合が仏パリで開催され、オランダ中央銀行のFrank Elderson理事が議長に就任し、フランス中央銀行が事務局を務めることが決定しました。冒頭の黒田総裁のスピーチによれば、今回のNGFSへの参加に際しては、フランス中央銀行をはじめとする関係者からの後押しがあったようです。

 黒田総裁は、このスピーチにおいて、バーゼルIIIをはじめとする国際的な金融規制・監督の過去10年の動きに触れたのち、将来的な課題としての金融安定に関する新たな論点としての気候変動問題に関する見解を述べました。その中の注目点を3つ紹介します。

 まず、気候関連リスクの特徴についてです。「他の金融上のリスクに比べて長い期間に亘って影響が持続するという長期的な影響」があり、「その影響がとても予見しにくいために、更なる調査や分析が必要である」と指摘しました。次に、「気候関連リスクの規制や監督を検討する際は、産業政策や環境規制・ガイドラインが、こうしたリスクへの対応としてどの程度効果的か、念頭に置いておく必要がある。このため、産業セクターと金融セクターの間で連携する余地があるかもしれない」と述べました。最後に、黒田総裁は、これまで金融規制・監督の観点で「大きすぎて潰せない」問題(注4)など、セクター横断的かつ時系列的な問題に対峙してきたことと同様に、「気候関連リスクの特徴である炭素排出が幅広い産業に影響をもたらすことや炭素排出の影響が長期にわたる問題となることが類似点になる」と指摘しました。

 現在国内でもTCFD提言に積極的に対応する取り組みが、一部の省庁、金融機関、企業を中心に進められています。金融庁に続く日銀のNGFS参加によって、TCFD提言に呼応した金融機関や企業の気候関連情報開示がより加速し、分析内容もより深化していくことでしょう。また、中央銀行と監督庁が出揃ったことで、気候変動リスクに関する国際会議等において、我が国がより建設的な発言ができる体制が整ったといっても良いのではないでしょうか。


(注1)日銀プレスリリース NGFSへの参加について

(注2)【挨拶】国際的な金融規制・監督:これまでの成果、現在の論点、将来の課題

(注3)金融庁プレスリリース NGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)への参加について

(注4)「大きすぎて潰せない」問題:2008年のリーマンショックでは、世界金融が危機的状況に陥り、各国の金融当局はその対応を迫られました。一般に「大きすぎて潰せない("Too big to fail")」とされる大手金融機関は、万一の破綻危機の際でも、政府救済が想定されるために、本来取るべきでないリスクテイクに走る懸念が指摘されてきました。こうした背景に基づき、大手金融機関に対して健全な財務体制を確保させるため様々な資本規制が課されてきました。
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