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リサーチ・レポート No.2019-016

【日本経済見通し】消費増税を乗り越え緩やかな回復が持続―経済社会構造の変化に伴う内需の拡大が景気をけん引―

2019年12月03日 村瀬拓人


足許のわが国経済は、輸出の減少を受け製造業が低迷しているものの、堅調な非製造業に支えられ、緩やかな景気回復が持続。

非製造業の堅調さは、経済社会構造の変化を反映。高齢化や新たなIT技術の台頭に伴い医療・介護や情報通信などの分野で需要が拡大。さらに、製造業の経済活動に占めるシェアのすう勢的な低下により、製造業の低迷が非製造業に波及しにくい経済構造に。非製造業の景気けん引力が高まるなか、内外需要が大きく下振れない限り、景気回復基調は崩れないと判断。

輸出は、世界的なIT需要の底入れや、設備投資抑制姿勢の緩和がプラスに作用。世界景気が全般的に勢いを欠くなか、力強い回復は期待しにくいものの、電子部品や資本財を中心に緩やかに持ち直す見込み。

消費増税後の個人消費も、前回2014年の増税時のような深刻な落ち込みや長期低迷となる事態は避けられる見通し。増税前の駆け込み需要は前回の4割程度にとどまっており、大幅な反動減は生じない見込み。また、軽減税率の導入や幼児教育・保育の無償化などを背景に、増税後も家計の実質所得はプラスを維持。駆け込み需要の反動減の一巡後、消費は再び緩やかな増加基調に復帰する見通し。増税後の個人消費の下振れリスクとして懸念されるキャッシュレス決済時のポイント還元措置の終了も、家計の負担増は限定的であり、個人消費の増加基調が大きく崩れる可能性は小。

東京五輪後の景気失速リスクも過度な懸念は不要。五輪に関連した公共投資は限定的なほか、都心部の再開発など民間投資が増加傾向にあることから、五輪後も建設需要は高水準で推移する見通し。ただし、五輪開催期間中は、政府支出の増加と国内外からの観戦客の消費支出で6,200億円程度の需要が発生するため、その反動減が五輪後の景気を一時的に下押しする見込み。

以上を踏まえると、成長率の上下変動がやや大きくなりつつも、外需の持ち直しと内需の底堅さに支えられ、緩やかな景気回復が続く見通し。2020年度および2021年度の成長率は、ともに+0.7%と、潜在成長率並みの成長ペースが続くと予想。

政府は、景気失速リスクに備え、大規模な補正予算を計画しているものの、わが国経済は、景気対策が直ちに必要な状況とはいえず。低成長の持続は需要不足ではなく成長力低下に起因するため、一時期的な需要創出策ではなく、供給サイドへの働きかけを通じた中長期的な成長力強化のための政策対応が必要。

【日本経済見通し】消費増税を乗り越え緩やかな回復が持続―経済社会構造の変化に伴う内需の拡大が景気をけん引―(PDF:604KB)
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