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CSRを巡る動き:2020年のダボス会議のテーマはCSR

2019年12月02日 ESGリサーチセンター


 10月中旬に世界経済フォーラムは来年2020年の年次総会の討議テーマを「持続可能で団結力ある世界を築くためのステークホルダー間連携(Stakeholders for a Cohesive and Sustainable World)」にすると発表しました。世界経済フォーラムは毎年1月に年次総会(開催地の名称に因んで通称ダボス会議)を開催します。世界から、財界、政界、国際機関、市民セクター、学術界のリーダーら約3,000名が参加して、グローバルレベルの課題について議論・情報共有をしています。

 これまでにもグローバル・リスク・レポートやグローバル100指数等で持続可能性や社会包摂に関連する意識啓発の取組は行われてきました。グローバル・リスク・レポートは約1,000名の世界の主要な意思決定者が懸念する、グローバルレベルでの脅威についての意識調査の結果です。その中には気候変動の深刻化や水不足などいわゆるCSRで取り上げられる要因が毎年含まれています。またグローバル100指数はカナダのメディア会社であるコーポレート・ナイトが同会議開催時に毎年公表している企業ランキングで、環境・社会面における定量的な実績を元に評価がなされています。

 こうした過去の経緯があるにもかかわらず、冒頭の討議テーマが設定された背景には以下の2つがあると考えられます。1つはグローバルレベルでの取組合意の成果がこれまで十分出ていないという懸念です。2015年に採択されたパリ協定やSDGs(持続可能な開発目標)は、来年で5年が経過することになります。政府や国際機関に達成に向けた推進力を取り戻して貰いたいと考えているようです。パリ協定やSDGsを具体化するための資金の流れについても検討することを目的として掲げています。

 もう1つは同会議が次回で50回目という節目を迎えることです。第1回ダボス会議で概念整理がなされ、1973年に承認されたダボス・マニフェストでは、「企業は全てのステークホルダー、すなわち株主だけではなく、顧客、従業員、地域社会にも報いるべきである」との考え方を明示しています。世界経済フォーラムは冒頭の討議テーマを改めて掲げた理由を、同会議発足の理念と結びつけて説明しています。

 その中でも特に以下の4点を緊急性・重要性が高い領域として取り上げるとしています。
1.環境や経済に対して悪影響を及ぼすとともに緊急性の高い気候変動およびその他の環境問題に対処する方法
2.新たな政治的、経済的、社会的優先事項に伴う取引、消費者行動の変化に対して、より持続可能で包摂的なビジネスモデルを到達するために産業界が転換する方法
3.第4次産業革命が財界、市民セクターに及ぼすリスクを最小化するため、その基盤技術を管理する方法
4.教育、雇用、企業家精神を再形成する人口動態、社会、技術面でのトレンドに適応する方法

 まだ詳細は明らかではありませんが、次回の会議ではダボス・マニフェスト2020や、企業や政府向けのESGスコアカードが公表されるといわれています。これらは今後50年の同フォーラムのステークホルダー配慮の基盤をなすものと予想されます。ステークホルダー配慮は本コラムのタイトルにあるCSRの根本理念です。次回のダボス会議を機に「CSRを巡る動き」が、グローバルに一層加速することが期待されます。
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