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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.19,No.75

日本の輸出管理強化を契機に韓国の脱日本は進むのか

2019年11月15日 向山英彦


日本政府による対韓輸出管理強化を契機に、日韓関係が一段と悪化した。経済産業省は輸出管理を見直す理由として、日韓間の信頼関係の喪失と韓国の輸出管理における不適切な事案発生を挙げたが、韓国政府は今回の措置を日本政府による事実上の報復措置(徴用工問題などに対する)として受け止めて反発した。今回の輸出管理強化が両国経済にどのような影響を及ぼすのかを検討するのが本稿の目的である。

韓国では18年に入り投資が冷え込んだうえ、米中貿易戦争の影響で秋口から輸出が減速し始めた。景気が悪化し、大統領の支持率が低下したため、文在寅政権は所得主導成長政策の速度調整を行う一方、経済の強化に乗り出した。そのなかで注意したいのは、日本の対韓輸出管理強化を契機に、国産化の取り組みを加速し始めたことである。

8月5日、洪経済副首相は個別許可制になった3品目(フッ化ポリミイド、レジスト、フッ化水素)を含む100品目を戦略的革新品目に指定し、7年間で7兆8,000億ウォンを投入して国産化を図ると表明した。このうち3品目を含む20品目については、1年以内に供給安定化(国産化と第三国からの輸入)を図る方針を示した。

韓国では対日貿易赤字削減のために、対日輸入を事実上制限する措置がとられた時期もあったが、2000年代に入ると、国内の部品・素材産業の強化、韓国企業の対日輸出促進、日本企業の誘致など、拡大均衡を目指す方向に転換した。

2001年に「部品・素材専門企業などの育成に関する特別措置法」が制定され、韓国企業の国産化を技術開発、事業化、人材育成などの面で支援する動きが本格化した。それとともに、日本企業を含む外資系企業を積極的に誘致した結果、部品・
素材分野の貿易黒字額が貿易全体の黒字額を上回るようになった。

その一方、今回の日本の輸出管理強化は、コアとなる素材分野での対日依存の高さを浮き彫りにした。18年をみると、部品・素材の対日貿易収支は151億ドルの赤字で、電子部品と化学製品分野(含む3品目)が大幅な赤字になっている。

日本の輸出管理強化後、韓国政府が企業の国産化支援を強化する一方、韓国企業による取り組みも進んでいる。サムスン電子は半導体生産工程の一部に、国産フッ化水素の投入を始めたことを発表した。

国産化にはクリアすべきハードル(技術・人材・コスト面)が多いため、輸出管理が強化された後も、日本から安定的に供給されることが確認されれば、国産化の動きに多少のブレーキがかかるものと予想されるが、韓国ビジネスを展開している日本企業には、韓国の国産化にどう対応していくのかが課題になる。

日本の輸出管理強化を契機に韓国の脱日本は進むのか(PDF:1304KB)
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