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リサーチ・アイ No.2019-031

英国は離脱延期後に「合意あり離脱」へ ―「合意あり離脱」後も先行き不透明感は拭えず―

2019年10月23日 高野蒼太


10月17日、英政府とEUが新たな離脱協定案で合意し、EU側はEU首脳会議でこれを承認。一方、英国では、19日の議会で合意案の採決が見送られたものの、ジョンソン首相が今月初めに可決された法案に従う形でEUに離脱延期を申請したため、当面の「合意なき離脱」リスクが後退。

ジョンソン氏は引き続き10月末のEU離脱を目指すとしているものの、離脱関連法案を審議する時間が不十分であることや、閣外協力与党のDUPが反対していることなどから、10月末までの合意案承認の可能性は小。このため、同氏は離脱延期後に総選挙に踏み切り、新たな議会構成で離脱協定案の承認を目指す公算が大。足許の支持率などを踏まえると、総選挙で与党保守党が議席を積み増し、その後の採決でジョンソン首相の離脱協定案が承認されると予想。

もっとも、「合意あり離脱」後の展開は楽観できず。離脱後、英国政府は、EUや第三国と新たな貿易協定などの交渉を開始。過去にEUが他国とFTA等を結んだ例をみると、交渉開始から発効までに要した時間は、最短の韓国の場合でも4年以上であり、10年以上要したケースも。既存の通商関係といった土台はあるものの、英EU双方のこれまでの主張には大きな隔たりがあり、交渉は難航する見込み。新たな通商関係の形を見通せない不透明感が、引き続き英国経済の重石に。

ユーロ圏景気に目を向けると、2016年の国民投票以降の英国向け輸出の不振が、製造業低迷の一因に。たとえ「合意あり離脱」になったとしても、英国経済を覆う先行き不透明感は拭えないため、英国向け輸出の大幅な回復は期待できず、ユーロ圏経済の足枷となる公算大。

英国は離脱延期後に「合意あり離脱」へ ―「合意あり離脱」後も先行き不透明感は拭えず―(PDF:321KB)
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