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ビューポイント No.2019-023

全世代型社会保障検討会議に期待される視点

2019年10月16日 飛田英子


「全世代型社会保障検討会議」(以下、検討会議)が9 月18 日にスタート。本稿では、全世代型社会保障に向けたこれまでの主な取り組みを整理・評価し、検討会議での議論に期待される視点について考察。

これまでの主な取り組みを整理すると、①待機児童や介護離職の解消を通じた潜在労働力の顕在化、②就職氷河期世代や障害者などに対する就労支援の強化や、健康寿命改善による労働可能期間の延伸など、既存人的資源の有効活用、③教育の無償
化による将来の人材育成、の大きく3 つ。このうち、教育の無償化については、消費税率引き上げによる税収増を財源とし、幼児についてはすでに2019 年10 月にスタート。

こうした取り組みは、高齢者中心の社会保障給付に世代間格差是正の要素を組み込んだことに加えて、支え手を増やすことで経済の持続的成長に寄与する点で評価。さらに、将来の人材育成は、子育てに係る機会コストを軽減すると同時に子どもの
資質を向上するという意味で、出生率の改善や生産性の高い人材育成が期待。

もっとも、教育無償化の財源については課題も。ひとつは、政策評価の視点。無償化の財源は、将来世代への負担付け回しの軽減(赤字国債の発行抑制)に活用するはずだった分を転用。将来世代の負担を増やしてまで実施する意義や必要性がある
か、十分な議論を踏まえたうえでの結論だったか疑問。もうひとつは、今後の財源確保の視点。今回無償化が実現した背景には、消費税率引き上げというイレギュラーなイベントの存在。厳しい財政事情が続くなか、今後も子どもに対する給付を充
実していくには、すでに手厚い部分から手薄い部分に財源を再配分するという視点が不可欠。

上記に加えて、検討会議での議論に期待される視点を整理すると、以下の通り。
第1 は、エイジレスな視点。高齢者は平均的に見ればすでに社会的・経済的弱者ではないうえ、労働をはじめとして社会の新たな担い手として期待されていることを踏まえると、敢えて年齢で制度を区切る必要があるのか否か、改めて検討するという視点が期待。
第2 は、将来イメージの視点。国民にとって最も関心ある社会保障の情報は、将来自分の生活がどうなるか。将来の年金収入や保険料支出を世帯パターンごとに示すという視点が期待。
第3 は、国民参加の視点。全世代型の社会保障は、国民全員が受益者であり負担者であるという意味で全員参加型の社会保障。国民に分かりやすい議論の進行と、現在の複雑かつ不透明な制度をシンプルに再編・統合していく視点が期待。

全世代型社会保障検討会議に期待される視点(PDF:478KB)
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