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リサーチ・フォーカス No.2019-018

デジタル・ガバメント実現に向けたわが国の課題-欧州のデジタル先進国の「Digital Government」から学ぶ

2019年09月26日 田谷洋一


2019年5月に成立した「デジタル手続法」によって、政府は「デジタル・ガバメント」の実現を目指している。同法では、行政手続を原則オンラインで行うほか、マイナンバーカードやオープンデータを従来以上に活用すること、行政サービスと民間サービスの連携を図ることなどが示されている。

わが国では2001年のe-Japan戦略以来、電子政府の実現を目指して様々な施策が推進されてきたものの、電子的な行政手続に対する国民の利用意向や認知度は依然として高くない。一方、欧州のデジタル先進国に目を転じると、行政手続のオンラインでの完結は勿論のこと、電子投票の仕組みや、市民が行政予算の使途決定に参画できる仕組みなど、行政と市民の双方向利用の仕組みが実現している。

欧州のデジタル先進国が推進する「Digital Government(わが国のものとコンセプトの違いを明確にするため、あえて英語で表記)」では、都市が抱える潜在的な課題の把握や、市民の要望に的確に応える街づくりの実現が目指されている。この背景には、AIやビッグデータなどの普及により、都市のあらゆるデータをリアルタイムに収集して分析し、高精度なシミュレーションを行い、事前に対策を講じることが可能になった点が挙げられる。

一方、わが国が推進する「デジタル・ガバメント」においても、行政手続きのさらなる利便性の向上や、行政サービスと民間サービスの融合など、利用者視点に立って行政機能のあり方を議論する動きも見られる。しかし、マイナンバーやオープンデータの活用など、個別の手段や施策の推進に重点が置かれ、欧州の先進的な国が取り組むような「Digital Government」の本質を捉えた俯瞰的な議論がなされていない。

欧州の先進事例からは、「Digital Government」で達成すべき目的が、市民の目線に立って、組織や業務まで含めた行政機能の再構築を実現することであると理解できる。従来の電子政府のように行政(サービス提供者)が一方的にサービスの仕様を決めるのではなく、行政が市民(ユーザー)の要望を把握し、市民を起点にサービスを作り変えることも必要となる。「Digital Government」の実現に向けた取り組みが、世界的にも活発化するなか、わが国の「デジタル・ガバメント」においてもそのような視点に基づく長期的かつ継続的な政策の推進が求められる。

「デジタル・ガバメント」は国民のインフラであり、段階的、継続的に発展させていくべきものである。短期的な目標を追求するのではなく、長期的なビジョンを示し、基本原則をしっかりと議論して確立するとともに、それに従って長期間にわたって継続的に取り組んでいくことが必要である。

デジタル・ガバメント実現に向けたわが国の課題-欧州のデジタル先進国の「Digital Government」から学ぶ(PDF:675KB)
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