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JRIレビュー Vol.11,No.72

ITツールを活用した高齢者の矜恃モード支援

2019年12月10日 辻本まりえ


わが国の高齢化は世界でも最も高い水準にあり、2017年には総人口の27.7%が65歳以上となり、人口の四人に一人が高齢者という時代に突入した。歳を重ねた高齢者の考え方や生活様式は、個々人の生活習慣や加齢の影響を反映しているため、現役世代と同じ視点で捉えることは難しい。アクティブシニアのマーケットは、若年層に比べて、より個別性の強い小さなマーケットの集合であるといえる。そのため、こうした高齢者マーケットの特性や、高齢者の生活様式の変化を踏まえ、これからの超高齢化社会の到来に向けて、高齢者の生活の質を真に向上させるために必要な施策を、高齢者の視点から検討することが求められている。

加齢に伴い、自分の身体機能や、友人等の社会的資源、経済的な資源において、ネガティブな変化が発生することは避けられない。ただ、こういった変化に自身でうまく対処し、ボランティア活動や余暇活動をはじめとする社会的活動を続けること、つまり「矜恃ある生き方を続けること」こそが、高齢者が共通して求めているものである。「矜恃ある生き方」の実現に向けた具体的な道筋を示し、行動を躊躇しがちな高齢者が自身の意欲に基づいて積極的に行動する環境をつくることこそが本質的な課題解決への道になる。

本論文では、自分の状況に合わせて主体的に行動を取捨選択し、満足度の高い生活を継続できている高齢者の状態を「矜恃モード」と呼び、高齢者が矜恃モードになるための仕掛けを提案する。高齢者が矜恃モードとなるにあたっては、自ら取捨選択し行動した実感を得る機会を創出することが最も重要である。

高齢者が矜恃モードになるための仕組みとして、「高齢者の矜恃モード支援システム」を提案する。「高齢者の矜恃モード支援システム」は、自治体と企業が連携し、地域の高齢者に対し矜恃モードへの移行・矜恃モードの維持を支援する仕組みであり、自治体による「『高齢者の矜恃モード支援システム』のための場づくり」と企業による「『高齢者の矜恃モード支援システム』への参加」の2層から構成される。「高齢者の矜恃モード支援システム」は、ITツールを活用することで、物理的課題の解決と心理的動機付けの両面からのアプローチにより、高齢者が継続的に前向きな活動を行える仕組みの構築を目指す。
とくに、シニア世代の物理的課題(距離が離れる、身体機能が低下する)に対して、ITツールを代替・補完の手段として活用することで、これまでの活動の継続を助けることが期待できる。

昨今の著しい技術革新は、高齢者が矜恃モードに移行するための新たな環境を創り出している。今こそ、これらの技術を活用し、高齢者が前向きに生きることができる社会の実現が求められている。現在の高齢者世代が抱える不安は、現役世代が将来的に抱えうる不安である。現在の高齢者世代が不安を乗り越え、誇りを持って自分らしく生きる姿は、現役世代の将来への希望となるだろう。
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