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気候変動と格差に注目すべき「国連SDGsサミット」

2019年09月10日 村上芽


 9月は毎年、国連総会が開催される。今年は、9月24~25日にそれに合わせ、ニューヨークで国連SDGsサミットも開かれる。2030年を目標年とするSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)について、進捗状況を踏まえた推進強化が確認されることになる。

 SDGsは、人類の豊かさのために、環境・社会・経済の3つを両立させながら成長しようという考えから作られた国際目標である。SDGsのSDにあたる「持続可能な開発」という言葉が広く普及したのは、1987年にブルントラント委員会が発表した「我々共通の未来」という報告書で、今から約30年も前の話だ。

 約30年も前から警鐘が鳴らされてきたから、確かに、昔よりもよくなっていることもたくさんある。乳幼児の死亡率は下がっているし、極度の貧困にある人の割合も減っている。治療方法の見つかった疾病もある。水道や電気の普及も進んだ。しかし、地球の環境・社会の状況は改善よりも劣化のスピードが速く、対策が足りないという危機感からSDGsは策定された。

 今年は、2015年にSDGsが採択されてからまる4年近くが経過したことから、例年以上に詳しく進捗状況の評価が行われている。7月9日に国連が発表した2019年版のSDGs報告書によると、一部には進展もみられるものの、まだまだ多くの分野で、緊急かつ、企業を含むステークホルダーの行動が必要とされている。代表的な分野は気候変動と格差の問題だが、主な指摘事項には以下がある。
 ・自然環境が、警報レベルの早さで劣化している
 ・海面が上昇している
 ・海水の酸性化が加速している
 ・過去4年間、毎年最も暑い年の記録を更新している
 ・百万もの種の動植物が絶滅の危機に瀕している
 ・土地の劣化が止まらない
 こうした事態が明確になっているにもかかわらず、我々の変化が遅すぎる、というわけである。

 貧富の格差も、国と国の差でみても、各国内の差でみても、拡大しているという。気候の急な変化や自然災害の増加が、より貧しい層に被害をあたえ、格差拡大を加速させてしまうのだ。

 気候変動により、日本では熱中症対策が毎年夏の生活上の必須事項になってきている。熱中症対策としては、冷房を使いこなすこと、栄養バランスのよい食事、涼しい服装や日よけなどが挙げられる。どれをとっても、一定の初期投資やランニングコストがかかるものばかりであり、こうした追加負担を感じやすいのは所得のより少ない世帯だ。負担を感じずに対策できた人は、身近にも、「気候変動と格差」の問題が起きていることを感じてほしい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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