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リサーチ・アイ No.2019-022

低迷が長期化するドイツの自動車産業 ―輸出依存度の高さと環境規制の強化が重石に―

2019年08月28日 高野蒼太


2019年4~6月期の実質GDP成長率がマイナスに落ち込むなど、ドイツ経済は足許で大きく減速。これまでドイツ経済を牽引してきた製造業が低迷しており、なかでも自動車産業の落ち込みが顕著。背景として、輸出依存度の高さと、主要輸出先である中国・欧州の景気減速が指摘可能。

まず、国内の自動車需要は落ち込みが一服。国内新車登録台数は、2018年9月に導入された排ガス規制に対する自動車メーカーの対応の遅れを受け急激に落ち込んでいたものの、足許で前年比プラスに復帰。一方、輸出は足許にかけても大幅な前年割れが続いており、低迷が長期化。ドイツの自動車産業は、日米に比べて輸出依存度が高く、外需の低迷が自動車生産の大きな重石に。

次に、自動車輸出先の内訳をみると、中国・欧州向けの割合が大きいという特徴。米国との貿易摩擦が激化する中国や、Brexitをめぐる混乱が続く英国、財政不安を抱えるイタリア、通貨安が進むトルコなど、政治的な問題が絡んで景気が減速している4ヵ国で3割弱を占め、ドイツの自動車輸出の低迷が深刻化する大きな要因に。

先行きを展望しても、自動車産業には厳しさが残る見通し。足許で在庫が積み上がるなか、自動車産業の生産見通しDIは「減少」超幅が大きく拡大。貿易摩擦やBrexitといったドイツを取り巻く問題の早期解決は期待し難いため、在庫調整が進み、生産が回復に転じるには時間を要する見込み。当面、自動車産業の不振が製造業、ひいてはドイツ経済全体の重石に。

さらに、やや長い目でみると、EUや中国で急速に進む環境規制の強化がドイツ自動車産業の足枷に。かねてより環境保護意識の強いEUでは、世界最高水準の厳格な規制導入が計画されているほか、環境汚染が深刻な中国も、近年急速に規制を強化しており、数年内に日本と同程度かそれ以上の水準となる予定。一方で、環境規制対応としてこれまでディーゼルエンジン車を主力としてきたドイツ自動車メーカーは、新たな環境規制への対応が遅れており、今後、シェアの低下や環境対策コストの増大に直面する恐れ。

低迷が長期化するドイツの自動車産業 ―輸出依存度の高さと環境規制の強化が重石に―(PDF:274KB)

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