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世界で最も長く経済成長を続ける国の“史上最大の都市開発”

2019年08月20日 中村恭一郎


 「世界で最も長く経済成長を続ける国」と聞いて、皆様はどの国を思い浮かべるでしょうか。米国との貿易を巡る争いが激化しているとはいえ、世界第2位の経済国として成長を続ける中国でしょうか。それとも、ASEAN域内の新興国や「地球のラストフロンティア」とも呼ばれるアフリカ諸国でしょうか。答えは、それらのいずれでもなく、日本から7~8千Km離れた南半球の先進国、オーストラリアです。

 オーストラリアのような“先進国”が「世界で最も長く経済成長を続けている」というのは少々意外な事実かもしれません。他の先進各国は、いずれも安定的ではあるものの実質GDP成長率でいえば1~3%成長であり、ときに金融危機等の影響を受けてマイナス成長に転じることもあります。

 これに対して、オーストラリアは、2019~2020年も2%以上の経済成長が予測されており、達成されれば1992年から28年連続でプラスの経済成長となります。積極的な移民の受け入れにより、現在2,500万人弱の人口が、2050年には3,800万人程にまで増加することが予想されています。足許での人口増加は、持続的、継続的に消費を拡大させ、この10年間で国内の小売売上高は1.5倍程も増加しています。

 一方で、人口増加により交通インフラの渋滞緩和、新たな住宅や就労機会の確保などが課題となっています。こうした中、主要経済都市であるシドニーでは、ニューサウスウェールズ州が主導する“Western Parkland City(シドニー西部パークランド都市)”開発が進められています。その中核となるのが、シドニー中心部から西に1時間程度の場所での新国際空港の建設(2026年開港予定)と周辺1,800ヘクタール程の広大なエリアでのAerotropolis City(空港都市)の開発です。

 開発によって同地域の人口は4~50万人にまで増加するとも予測され、さらにそれに備えて20万件の雇用創出と数万世帯分の住宅開発を目指すという、オーストラリアでは史上最大規模の都市開発です。筆者も現地を複数回視察していますが、既に、地域の動脈となる道路網の新設・拡張工事が次々に進められているほか、この5月に第一期区間が開通した地下鉄“Sydney Metro”も将来的に新空港エリアまで延伸する計画となっています。

 日本からの投資に対する期待も大きく、既に、在日豪州大使館などが主催して同開発の情報提供を目的とするセミナーなどが複数回行われています。空港・地下鉄といった交通インフラと一体的に都市開発を進めることから、特に、日本の公共部門や民間企業が有するTOD(Transit Oriented Development)のノウハウや、廃棄物リサイクル、エネルギーといった都市インフラ整備のノウハウへの期待が集まっています。

 これほどの大規模都市開発では、様々な都市インフラの整備が行われ、いくつもビッグプロジェクトが同時並行で進められることとなります。今日主流となっている“Smart”な開発という観点に加え、環境共生や防災など持続的な都市基盤の確保、地域との丁寧な合意形成など、様々な配慮と工夫を凝らした取り組みが求められています。次回は、より具体的に日本への期待を掘り下げながら、日本企業の活躍機会や参入に向けた戦略、アプローチを述べたいと思います。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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