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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.19,No.74

文在寅政権下で揺らぐ韓米同盟と変化する経済関係―ファーウェイ制裁への対応が課題に

2019年08月21日 向山英彦


文在寅政権下で韓米同盟が揺らいでいる。対北朝鮮政策をめぐって関係がぎくしゃくしたうえ、最近では、アメリカがファーウェイ制裁への同調を求めているのに対して、文政権が明確な姿勢を打ち出せないでいる。中国の圧力が影響しているためである。

韓国政府が米中の狭間で身動きの取れない状況に陥っている背景には、冷戦体制崩壊後、経済面や北朝鮮問題で中国の重要性が高まったことにより、対米関係とともに対中関係に腐心するようになったことがある。本稿はこれまでの韓国の対米・対中関係を振り返りながら、文政権下の対米・対中関係について、経済面を中心に考察する。

韓米同盟がぎくしゃくする動きは、2003年に成立した盧武鉉政権期にもみられた。同政権が前政権の対北朝鮮融和政策を継承する一方、ブッシュ大統領が同時多発テロ後北朝鮮に対する姿勢を厳しくしたことによる。しかし、盧大統領はイラク戦争の際に同盟国としてイラクへ派兵するなど、最終的には韓米同盟を重視する行動をとった。

盧武鉉の後に大統領に就任したのは、保守派の李明博であった。外交面では、北朝鮮の核問題解決を最優先課題に置き、六者会合を通じた解決をめざし、アメリカ、日本、中国、ロシアとの関係を重視し、なかでも対米関係を強化する方針を打ち出した。

朴槿恵政権は当初北朝鮮との信頼醸成を図る一方、中国を重視する外交を展開した。しかし、北朝鮮が相次いでミサイル発射と核実験を行ったため、北朝鮮に対する制裁を強化する方針に転じるとともに、韓米同盟に軸足を置くようになった。この帰結が在韓米軍へのTHAAD配備の決定であるが、それを機に中国の経済報復が開始された。

朴政権の後に誕生した文在寅政権にとって、北朝鮮の核開発問題と対中関係の改善が重要な外交課題になった。しかし、逆に北朝鮮政策をめぐって対米関係がぎくしゃくするようになったほか、対中関係の改善も期待したほど進んでいない。

文政権にとり、トランプ大統領が問題視した貿易不均衡への対応も重要な課題であった。韓米FTA再交渉ではアメリカの要求を大幅に受け入れることになった。さらに韓国は米中貿易戦争の影響により成長にブレーキがかかるなど、厳しい経済環境に直面している。

こうした状況下、文政権にとって新たな課題になったのが、アメリカのファーウェイ制裁への対応である。アメリカが反ファーウェイ陣営に加わるように促しているにもかかわらず、中国からの報復を懸念して、明確な姿勢を打ち出せないでいる。韓国は米中の狭間に置かれ、身動きが取れない状況に陥っている。

文在寅政権下で揺らぐ韓米同盟と変化する経済関係―ファーウェイ制裁への対応が課題に(PDF:990KB)
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