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CSRを巡る動き:企業に求められるパワーハラスメントへの対応

2019年05月07日 ESGリサーチセンター


 2019年2月、労働政策審議会の分科会は、企業へのパワーハラスメントの防止義務を含めた女性活躍推進法などの改正案要綱を了承しました。厚生労働省は、今国会での成立を目指しています。法案が成立すれば、企業には、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務(相談体制の整備等)が課されます。パワーハラスメントの防止義務が法制化されるのは日本では初めてのこととなります。

 法整備の背景には、パワーハラスメントが社会的に大きな問題となっていることが挙げられます。厚生労働省「2017年度個別労働紛争解決制度施行状況」によると、都道府県労働局に寄せられた企業と労働者とのあいだの紛争に関する相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」に関するものは、2016年度で7万2,067件に上り、2002年度(約6,600件)に比べて著しく増加しています。厚生労働省委託事業「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(2017年3月、委託先:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社、以下「厚生労働省の調査」)によると、3人に1人(32.5%)がパワーハラスメントを受けた経験があると回答しています。

 パワーハラスメントが企業のなかだけで問題解決に至ることが難しい理由は複数ありますが、いじめ・嫌がらせを行う人間が、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性などを利用して行うケースが多いことは代表的な理由のひとつです。「厚生労働省の調査」によれば、過去3年間に、パワーハラスメントを受けたと感じた人のうち、「何もしなかった」人は40.9%に上り、その理由として「何をしても解決にならないと思ったから」、「職務上不利益が生じると思ったから」が挙げられています。

 パワーハラスメントの防止義務が法制化されれば、その防止に向けた相談体制等が強化され、パワーハラスメントに対する意識は、経営者、従業員共に高まることが予想されます。しかし、前述したように、パワーハラスメントの問題が、構造上表面化しづらい問題であることを踏まえれば、体制を整備したところで、被害を受けていても相談する人が出てこない可能性もあります。窓口を社外に複数設ける、第三者機関が定期的に調査を行う、テクノロジーを活用してパワーハラスメントの検知を行うなど、隠されたパワーハラスメント問題を発見するための工夫や仕組みが必要でしょう。

 2018年のILO年次総会では、ハラスメント禁止に関する新たな条約の制定に関する議論が行われました。2019年の年次総会での制定を目指しており、もし、条約が制定されれば、世界で初めてハラスメント対策に関する国際的なルールが定められることになります。条約の批准は各国の判断に委ねられますので、日本がどのような判断を下すかは見通せません。しかし、国内のみならず、海外の動向を踏まえると、パワーハラスメントを始めとした各種ハラスメント対策は、今後、企業が取り組むべき重要なESG課題のひとつになるでしょう。
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