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CSRを巡る動き: ブルーボンド市場拡大への期待と今後の課題

2019年04月01日 ESGリサーチセンター


 海洋環境の保全と経済発展の両立に向けて、債券市場の資金が動き始めています。2018年10月、インド洋に115の島々を持つセーシェル共和国政府が、世界で初めて「ブルーボンド」を発行しました。ブルーボンドとは、海洋環境の保全や、持続可能な漁業等の支援に資金使途を限定した債券です。発行額は1500万米ドルで、海洋保護区域の拡大、漁業権優先割当てにおけるガバナンスの改善、及びセーシェル共和国の「ブルーエコノミー」の開発支援のために使われます。調達した資金は、2つのファンド(ブルー・グラント・ファンド及びブルー・インベストメント・ファンド)を通じた助成と融資の形で提供されます。両ファンドは、セーシェル保全・気候変動適応トラスト(SeyCCAT)、セーシェル開発銀行(DBS)がそれぞれ管理しています。

 資金使途に挙げられている「ブルーエコノミー」は、海洋資源の持続可能な利用を通じて、海洋環境の保全と経済発展の両立を目指そうとする概念です。OECDが2016年に公表したレポート「The Ocean Economy in 2030」によると、海洋経済関連の市場規模は2010年から2030年までに2倍以上に増加し、3兆ドルを超える可能性があると言われています。なかでも大きな成長が見込まれている産業分野は、養殖、洋上風力、水産加工等ですが、例えば水産加工業では、海洋環境汚染等により漁獲量が減少すれば産業として死活問題になりかねません。最近では、海洋プラスチックごみ汚染への危機感も高まっていることから、「ブルーエコノミー」の概念は今後ますます重要視されるでしょう。

 一方、「ブルーエコノミー」の具体的な内容については、どのような活動を対象とするのかなど、その定義は統一されていません。2017年に世界銀行が公表したレポート「The Potential of the BLUE ECONOMY」の中では、「ブルーエコノミー」として以下の活動(及びその関連産業)が定義されています。

1.海洋生物資源の捕獲と取引(漁業、魚介製品の取引、養殖、化学薬品等への海洋生物資源の利用)
2.海洋非生物資源の採取と利用(鉱物、石油・ガス等のエネルギー資源の採取、海水淡水化)
3.再生可能エネルギーの創出(風力、潮流、潮力エネルギーの生成)
4.海洋及び沿岸地域における商業(輸送、沿岸開発、ツーリズムとレクリエーション)
5.経済活動と環境への直接的な貢献(二酸化炭素固定、海岸保護、廃棄物処理、生物多様性の保護)

 関連産業の中にはツーリズムも含まれますが、観光客を受け入れるためのホテル等の乱開発により生物の生息環境が破壊される問題はよく聞かれます。また、大勢の観光客が押し寄せ、交通機関の混雑や住民の静穏な生活環境が乱されるなど、社会面でマイナスの影響を与えかねない側面もあります。「ブルーエコノミー」を定義する上では、こうした環境・社会面のネガティブインパクトも可能な限り定量的に計測したうえで、その活動が本当に海洋資源の「持続可能な利用」と言えるのかを吟味すべきです。

 ブルーボンドを発行するという構想はもともと、英国のチャールズ皇太子が運営するInternational Sustainable Unit(ISU)によるセーシェル共和国への支援の中で得られたと言われています。ISUは、欧州委員会、欧州投資銀行(EIB)、世界自然保護基金(WWF)と共同で、2018年3月に、持続可能な海洋経済のための金融原則「Sustainable Blue Economy Finance Principles(ブルーファイナンス原則)」を策定・公表しました。「原則7:Transparent」では、投融資を行うプロジェクトの環境・社会・経済面でのインパクト(ポジティブとネガティブの両方)に関する情報を明らかにすることが推奨されています。セーシェル共和国のブルーボンド発行を皮切りに、今後、ブルーボンド市場拡大への期待が高まる一方で、その資金使途である「ブルーエコノミー」にどのような活動を含めるのか、活動によるネガティブインパクトも踏まえ、定義を明確化することに早急に着手すべきではないでしょうか。
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