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超高齢社会で必要となる学び方・教え方のアップデート

2019年02月26日 山崎香織


 生活上の困りごとが出てくるギャップシニアや介護を必要とする高齢者の増加に伴い、介護未経験者を含めた介護人材のすそ野を拡げる必要性が指摘されています。さらに自宅や地域、商業施設などで、高齢の家族や近隣住民、各種サービスの従事者のような一般の人が、高齢者の活動やコミュニケーションを支援する場面も増えていくでしょう。

 片麻痺や認知症など多様な心身状態の高齢者を支援する手法は、介護職やリハビリテーション専門職が経験を通じて培ってきました。それらの支援手法を初任者や家族などが学ぶにあたっては、新しいテクノロジーの活用が鍵になると考えています。

 筆者が携わっている「介護福祉士のチームリーダー養成研修」では、e-learningを活用した事前学習や、実際の支援場面を映した動画を用いたグループワークを取り入れ、従来の紙ベースの教材では難しかった動作やコミュニケーションのコツを分かりやすく伝える工夫を実現しています。また最近はVRを活用したリハビリテーション機器(株式会社mediVR)や、AIを活用して初任者の認知症ケア技法習得を支援するサービス(株式会社エクサウィザーズ)も登場しつつあります。

 これらの先行例や大人の学びに関する理論を踏まえると、初任者や家族による支援手法の学習において新しいテクノロジーを活用することは以下の点で有効だと考えられます。

 1つ目は五感への働きかけです。熟練した介護職であっても、自分が行っている支援手法を言葉で上手く伝えられない場合があります。支援手法は判断や動作、声かけなどの組み合わせで成立しており、言葉での説明に加えて動画やモーションキャプチャ(動作を記録する技術)を活用することで、多角的・総合的に伝えやすくなります。

 2つ目は即時のフィードバックです。学習者の動作や発話を瞬時に評価し、改善点を提示することで、学習者としてはすぐに行動の改善ができます。類似の例としては発音を評価する英語学習のアプリなどが先行しています。

 3つ目は継続性です。子どもの学びとは異なり大人の学びには、時間や場所の制約がある中で自発的に継続できるような仕掛けが大切です。アプリなどを活用した学習記録の蓄積やクイズ形式での出題、実践や事例を交えた解説は、学習のモチベーション維持に効果があります。

 筆者としても、当社で取り組んでいるリビングラボ(高齢者や専門職が商品開発に携わる取り組み)や専門職団体の研修企画などで、新しいテクノロジーを取り入れた「学び方・教え方のアップデート」を積極的に促していきたいと思います。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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