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シンセンに見るスマートシティ事業のビジネスモデル

2018年11月13日 程塚正史


 広東省・シンセン市は、今や隣接する香港を超える域内総生産高を誇り、中国で最もベンチャー投資が盛んな街の一つだ。足元でも、多くの日本企業の方から新興企業との連携可能性を求めてシンセンを訪問したという話を聞く。

 ベンチャー企業の勢いに注目が集まる一方、その勢いを促しているのは、豊富な資金力を持つ巨大な産業集積と、都市行政の支援の賜物といえる。シンセンに拠点を構える大手企業としては、ITの騰訊控股(テンセント)、通信設備メーカーの華為技術、保険の平安保険、デベロッパーの万科集団などが挙げられる。

 シンセン市政府はこれらの大手企業と連携して、都市のスマートシティ(中国語では「智慧城市」)化に注力中だ。中央政府は2011年からの第12次五カ年計画以来、スマートシティの構築を推進してきており、内実はともかくスマート化が進んでいるとして500都市を「スマートシティ」として取り上げているが、シンセン市はその中でも先導的に実装を進めている都市といえる。

 先日、シンセン会展センターで開催されたスマートシティ国際展示会(中国語では「智慧城市国際博覧会」)を訪問した(国家発展改革委員会都市改革発展センター、シンセン市政府、平安保険の共同開催)。特に、上述のテンセント、華為技術、平安保険の3社が展示会場の多くのスペースを占め、それぞれの技術や構想を展示していた。

 講演や展示内容を見て改めて感じるのは、スマートシティという言葉で表現される取り組みのコンセプトが、日本や米欧と大きく異なることだ。「スマート」と言う以上、都市の各種データを取得してきて分析し、何らかのサービスを提供するという意味では同様であるが、日米欧ではそのサービスの提供対象が住民や来街者などのエンドユーザーであるのに対して、中国では、原則として行政を対象にしているといえる。

 シンセンの展示会でもそうだったが、中国のスマートシティ関連の取り組みとして真っ先に挙げられるのは交通管制の効率化だ。深刻化する渋滞問題や頻発する交通事故に対して、交通流の制御や事故対応の迅速化を促すという内容である。その次には警察行政の効率化、すなわち街頭の防犯カメラ等による検挙率の向上や犯罪発生数の低下が挙げられ、それらに続いて電力・水道等のインフラマネジメント、工業団地マネジメントなどが挙げられることが多い。いずれも、行政の業務効率化を図ることが狙いといえる。シンセンの展示会では、これらの他に、公設市場運用業務や病院管理業務のスマート化などが挙げられていた。

 このように、日米欧と中国のスマートシティではコンセプトが異なる(日本と米欧も異なると思われるがここでは触れない)。どちらが優れているというわけではないが、中国のスマートシティの場合、事業化検討がしやすいという利点があるように思われる。すなわち、行政の業務効率化を図ることを目的としているため、VFM(Value for Money)を考慮することで政府からスマートシティ関連事業者にフィーを支払いやすい構図といえる。

 当然、エンドユーザー向けサービスに主眼を置く場合でも、医療費の抑制や赤字バス路線の廃止など行政効率の向上に貢献している。もちろん、中国の取り組みをそのまま日本に持ち込めるわけではないが、スマートシティ関連の事業化を図る際には、より行政向けサービスに重点を有している中国での取り組みは参考になろう。

 特にシンセン市は、資金力があり、大手・新興ともにプレイヤーがそろっている。今後の展開に注目するとともに、日本総研ではそれらの取り組みへの支援を図っていきたい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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