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【シニア】
第31回 「シニアの今」は「みんなの未来」

2018年10月23日 辻本まりえ


 皆さんにとって、「高齢者像」とはどのようなものでしょうか。また、自分自身が年を重ねることについて、どのようなイメージを持っていますか。
 20代の私にとって、「高齢者」「シニア」という言葉は、「祖父母世代のこと」であり、「自分にはまだまだ関係のないこと」という印象を受けます。また、そんな私が描く「高齢者の生活像」とは、活動が縮小し、家に引きこもりがちで、日々辛いことが多いというネガティブなイメージです。
 これまで、シニアとの直接の接点を通して、加齢に伴い「やりたいこと」と「できること」の間にギャップが生まれ、いろいろなことを諦めているギャップシニア(※)を多くみてきました。しかし中には、私の想像するネガティブなイメージとは程遠く、自分のやりたいことを実現しながら生き生きと生活を送っているシニアもおられました。そんな生き生きと充実した生活を送るシニアの事例を2つご紹介したいと思います。

(※)ギャップシニアとは、元気高齢者と要介護高齢者の間の高齢者を指す日本総研の造語です。

 (事例1)「年金で2種類の習い事にお金を払うのは難しいから、スポーツジムから洋裁教室に習い事を切り替えたの。自分の洋服を作ったり、お友達のお洋服の裾上げをしてあげたり、日々好きなことが出来て楽しいわ」
 (事例2)「骨折で入院してから、掃除機が重くて掃除が出来なくて気落ちしていた。でも、娘が買ってくれたハンディタイプの掃除機のおかげで、私の役割が復活したわ。今後、洗濯機の買い替えも検討しているの」
 これら事例のシニア達も「年金生活の不安」や「骨折により、今までと比べると歩行が困難」といった加齢に伴う不安や不便は感じているとはいうものの、今の自分の生活に満足していて今が一番楽しいのだと口々に言うのです。

 この生き生きと生活を送っているシニア達の共通点は、加齢に伴う不安や不便をうまく受け止めており、その状況を踏まえて、自分流の心地よい生き方を選択していることだと私は思います。
 先ほどの事例に当てはめると、
 (1)「自分の資産の状況(事例1)」や「自分の身体の状況(事例2)」といった、今自分にできること・できないことを見極め、
 (2)自分の不足部分は、「ハンディタイプの掃除機(事例2)」といった先進的なツールを活用して補うことで、
 (3)「好きな習い事を続ける(事例1)」や「家事をきちんとこなす(事例2)」といった自分のやりたいことを選択し、自己実現を成し遂げられていると言えます。
 若い頃とは異なり、ギャップシニアになり始める世代は加齢に伴いできなくなることが徐々に増えます。そのため、日々の一つ一つの行動に対して「これは(道具などを活用しても)続ける」「これはあきらめる」といった取捨選択が必要となります。自分の状況に合わせて行動の取捨選択ができるようになることで、年を重ねてもできることが減っても継続的にやりたいことを実現し、生き生きとした生活を送ることができます。
 そのためには、シニア自身が自ら選択をするように促すことも必要ですが、シニアが自発的に選択をしたという感覚が得られるような仕掛けや環境整備を周囲が行っていくことも必要です。自ら取捨選択をしたという実感が、次の取捨選択を行うための動機へとつながっていきます。そういった環境整備を、私達は社会的に取り組んでいくべきだと思います。

 シニアの今・未来は、若い世代にとっての未来の姿です。将来のあなたは、自分が欲しくないものの提案を、次から次へと受けたいと思うでしょうか。それよりは、自分がやりたいと思ったこと、欲しいと思ったものを選択し続けられることの方が魅力的ではないでしょうか。「シニア」といっただけで若い人は「他人事」と捉えがちですが、自分自身の将来であると考えれば、全員が「自分事」として向き合っていくことが必要です。ギャップシニアの心地よい生活が、若い世代にとっても希望を持てる将来像となるように、今後も活動を続けていきたいと思います。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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