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CSRを巡る動き:ふるさとテレワークの意義

2018年07月02日 ESGリサーチセンター


 働き方改革の一環として、従業員が場所や時間を柔軟に選択できる制度や仕組みづくりに取り組む企業も出てきています。そのひとつとして最近注目されているのが「ふるさとテレワーク」です。「ふるさとテレワーク」とは、地方のサテライトオフィスやテレワークセンター等において、都市部の仕事を行うことを可能にする通信技術を活用した就業のことを指します。総務省では、地方自治体や民間企業等に対して、サテライトオフィス等のテレワーク環境を整備するための費用の一部を補助する事業を開始しています。

 総務省「平成29年版 情報通信白書」によれば、「他地域の企業のためのサテライトオフィスの誘致」を既に実施している自治体が42.9%、関心があるが、まだ取り組みを実施していない自治体が26.5%だという結果が得られています。ふるさとテレワークを通じて、地域の活性化につなげたいと考える自治体も少なくないことが窺えます。

 企業側にも「ふるさとテレワーク」は次のような意義があるでしょう。第一は、交流人口の増加への貢献が挙げられます。従業員が週の前半は都市部に、後半は地方部に、と複数に住まいを持って働くことを可能にすれば、地方部では人口増加ないしは都市部との交流人口拡大を実現できます。企業が直接、地域活動に貢献することも大切ですが、従業員が地方部にも住まいを持ち、地域づくりに参加・協力していくことができれば、間接的に地域活動に貢献することにつながります。

 2つ目には、働く人の健康管理が挙げられるでしょう。働き方改革と並行して生産性向上への認識が高まり、限られた時間で成果を出すために生活全体を見直す人も多くなっています。住まいと職場を近くし、極力無駄な時間を減らすことは、一見、効率的に見えますが、働く人にとっては精神的負担が増加するという指摘もあります。国内では、ヘルスツーリズムがストレスの軽減に役立つとして注目をされています。定期的に自然環境に恵まれた場所で働けるというのは、従業員の健康維持にも役立つと考えられます。

 最後は、人材育成の効果です。市場の成熟化や競争環境の激化に伴い、新しい発想や新しいビジネスを創出できる人材はますます必要とされています。「ふるさとテレワーク」によって、多様な環境で多様な生活を体験し、多様な人たちとコミュニケーションを図る人材を社内に繋ぎ止めておくことができれば、社内人材の活性化を実現できるでしょう。

 2018年5月末には、働き方改革関連法案が衆院本会議で可決されました。法案では、残業規制、同一労働同一賃金、脱時間給制度が中心になっていますが、今後の政策メニューとして「ふるさとテレワーク」推進を盛り込んでいくことは、働き方の選択肢を広げることに大いに貢献できるでしょう。
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