コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

北京モーターショーに見る中国自動車関連プレイヤーの優勝劣敗

2018年05月22日 程塚正史


 4月25日から5月4日にかけて、2018年の北京モーターショーが開催された。テーマは「自動車との新たなライフスタイル」(筆者訳。原文「定義汽車新生活」)とされ、中国国内はもちろん世界の主要自動車メーカーが出展した。

 中国のモーターショーは、東京モーターショーと異なり一般公開日は家族連れが多く、比較的落ち着いた雰囲気だ。東京の場合はクルマ好きの男性が新型車や復刻車両に熱を上げたり、カラフルな衣装のコンパニオンの存在感が強かったりするのとは対照的に、中国の場合は自家用車購入を検討するための来場者やビジネス客の割合が多い。

 世界の自動車業界は2010年代前半以降、自動運転など技術の進展やシェアサービスなどのニーズの拡大を受け、業界を挙げて「モノからサービスへの進化」を追及している。米欧や日本での変化と同様、あるいはそれ以上に、中国でも滴滴出行のようなシェア利用促進サービスやIT企業による新技術開発が一気呵成に進展してきている。

 このようなここ数年の中国市場でのモビリティ関連サービスの急速な展開と比べると、北京モーターショーの展示内容もまた、会場の雰囲気と同様に全体としては「落ち着いたもの」だった。各社の出展内容はあくまでEVなど車両という「モノ」の展示にとどまり、新たなコンセプトの提示やそれに資する新技術の紹介は、市場での動きほど目を見張るものではなかった。

 それは逆説的ながら、IT企業の存在感の大きさを思い知らされるものだった。というのは、中国の大手IT企業で、自動走行技術開発を主導したり、モビリティサービス事業者に出資したりするバイドゥやテンセントなどは、モーターショーに出展しなかった。そのためあくまで「モノ」の展示が大多数を占め、自動車を活用したサービス進化についての展示は一部にとどまるという状況になったということができる。

 とはいえその中でも、今後の進化の予兆を感じさせるモノの展示もあった。大まかに言えば、中国完成車メーカーの中でも、新興企業にはサービス化を意識したコンセプト提示が多く、伝統的な国有大手はそうではないという傾向があったといえる。

 先進企業の代表格としては、すでに大手の一角でもある吉利汽車が挙げられる。EVなど新エネルギー車の製造・販売でも先導的な役割を担う同社だが、モーターショーでは、販売後の顧客向けサービスにも注力する姿勢を見せた。それは、IoV(Internet of Vehicle)技術を使い、購入後の顧客に向けて各種アプリケーションを提供することで車両の利用満足度を高めるという方針だ。トヨタの「Tコネクト」のような手厚いサービスではおそらくないが、そのぶん手軽に使えそうな印象を受けた。

 中堅の自動車メーカーである江准汽車や力帆汽車の先進性も目立った。江准汽車はEUの研究開発プロジェクト” Horizon 2020”による小型EVを展示し、外出促進サービスの可能性を提示した。力帆汽車はシェア利用向けの車両を展示するとともに、インフラ連携による街づくりサービスの可能性を示唆した。

 新興の車両メーカーにも存在感があった。間もなく販売が始まるブランド名NIOの蔚来汽車を筆頭に、EX5をすでに販売している威馬汽車、ブランド名BYTONの拝騰汽車、AIWAYSの愛馳汽車などである。車両間通信による自動走行やアプリの追加ダウンロードによるサービスといった方向性を提示していた。このような企業にはIT企業大手が出資しており、今後、自動車販売にとどまらない収益源のあり方を検討していくと思われる。

 2020年代に向けて自動車業界にはますます変化が迫られる。特に中国市場は市場規模が大きいだけでなく、新サービスへの利用者の受容度も高く、政府の支援もあるため、変化の先陣を切る可能性が高い。日本企業としても、中国企業との協業も含め事業機会を見定める必要がある。中国の完成車メーカーがおのおの、どのような対応方針をとっていくのか、より詳細に注目していきたい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
カテゴリー別

業務別

産業別

レポートに関する
お問い合わせ