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CSRを巡る動き:SDGs達成に向けた金融機関の取り組み拡大

2018年04月01日 ESGリサーチセンター


 国連のSDGs(持続可能な開発目標)の採択から2年半が経過しました。SDGsの主流化に向けた国際機関や政府の活動に導かれるように、企業におけるSDGs達成に貢献する取り組みも、様々なものが見られるようになりました。こうした取り組みを後押しする背景の一つが、昨今取りあげられるキーワード「ESG投資」でしょう。世界各国の投資家や運用機関が、企業や事業におけるESG側面に配慮した投資判断を進めるなか、SDGsという目標の登場はそうした投資活動への明確なゴールを示したと言ってもよいでしょう。こうした投資活動の拡大に伴い、金融機関もSDGs達成に資する資金の流れの形成に貢献しようと、「SDGs」を謳った様々な金融の取り組みを開始しています。

 英HSBCは、2017年11月のCOP23の開催に合わせ、SDGsのうち同社が選択した7つの目標の達成に資する投融資のため、10億米ドル(約1,100億円)のサステナビリティ・ボンド(通称:HSBC SDGs債)を発行しました。具体的な資金使途として、病院、学校、小規模な再生可能エネルギー発電所、公共鉄道網などを対象としています(注1)。
 仏ソシエテ・ジェネラルでは、2018年1月に液化天然ガス(LNG)の船舶燃料としての普及を目的とした世界的業界団体であるSEA\LNGに金融機関として初めて加盟しました。海洋環境保護の観点からLNGの活用は船舶から排出されるCO2、SOx、NOx低減に有効と考えられていますが、同行では加盟と同時に、仏Brittany Ferries社のLNG動力船の購入資金のために1.42億ユーロ(約182億円)の融資を行っています(注2)。同行は、こうした資金使途を限定した融資の取り組みを国連環境計画の金融イニシアティブが提唱するSDGs達成のための「ポジティブ・インパクト・ファイナンス原則」(注3)に則した金融活動と定義しています。
 スイスUBSグループでは、2018年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)において、SDGs達成に向けた取り組み状況を発表しました。これは、昨年の同会議において個人富裕層向けのSDGsに関連したテーマ型投資ファンドを今後5年で50億ドル以上販売する、と公表した後の様々な取り組みの進捗経過が示されたものです。その最たる特徴は、国際機関、他の金融機関、顧客、社会起業家など多様なステークホルダーとの連携を通じ、SDGsの各分野の異なる時間軸に投資を分散化させようとしている点にあると言えるでしょう(注4)。2017年の英調査会社のランキングで同グループは「SDGs達成のために顧客、企業、公的機関の資金を動員した世界最大の資産運用会社」として評価されています。(注5)

 このように、資金使途をSDGs達成に資する取り組みに限定した債券発行、融資実行、ファンド運用など、実業を持たない金融機関であってもSDGsの達成にむけた資金の流れの構築に貢献できることが、事例として示されてきました。投資家や企業によるSDGsへの関心の高まりからも、今後も多くの金融機関がこうした取り組みを進めていくことでしょう。


(注1)詳細は下記のPDFを参照。
世界初のSDG社債を発行 - HSBC Japan プレスリリース(PDF:186KB)

(注2)詳細はソシエテ・ジェネラル プレスリリースを参照。
Societe Generale becomes first financial institution to join growing SEA\LNG coalition

(注3) 国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)が2017年1月に、世界の主要金融機関19社とともに制定した、SDGs達成に向けて金融機関が積極的な投融資を行うための原則。ソシエテ・ジェネラルは同19社のうちの一つ。

(注4) UBS(2018) Partnerships for the goals: Achieving the United Nations’ Sustainable Development Goals, January 2018

(注5) Scorpio Partnership Global Private Banking Benchmark 2017, 9 August 2017.
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