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CSRを巡る動き:加速するプラスチック使用抑制

2018年03月01日 ESGリサーチセンター


 マイクロプラスチックによる海洋汚染や、それを食べた魚や鳥類の体内にプラスチックが溜まる問題について、新たな環境汚染として日本でも少しずつ関心が集まってきました。マイクロプラスチックの含まれた海水の浄化の手立ては確立しておらず、根本的な解決策はプラスチックの使用量そのものを減らしていくことしかありません。こうした状況下、世界各地でプラスチックの使用抑制を求める動きが加速しています。

 EUでは2015年12月に「循環型経済パッケージ」を導入し、都市ごみの再資源化率を2030年までに65%にする、包装廃棄物の再資源化率を2030年までに75%にするなどのEU共通の目標を掲げて、廃棄物管理の改善に取り組んできました。最近特に動きが加速しているのが、2018年1月18日に採択された「プラスチックごみ対する戦略」が示す、プラスチック対策です。同戦略では、「EU域内における製品のデザイン・生産・使用・再生利用の方向転換をもたらす」ことを目指し、環境保護と経済成長・イノベーションを同時に達成するものであるとしています(注1)。新たな戦略のもと、EU市場に流通するすべてのプラスチック製の包装材は、2030年までに再生利用可能なものにすることを打ち出しています。これは、2015年に採択された国連の持続可能な開発目標(SDGs)とも同じ方向を向いていることから、欧州で環境経営に野心的に取り組む企業では既に、代替資源の開発・実用化や、販売済製品の回収・循環システムの構築などの動きが始まっています。先駆的に取り組む企業からすれば、新たな製品・サービスの開発を後押しする政策が明確化し、むしろ歓迎すべき内容と言えるでしょう。なお、EUの調べによると、プラスチックに対するセクター別の需要では、4割弱が包装資材で最大ですが、次に、約2割が建設、1割が輸送用機器となっています。まずは包装資材におけるプラスチック利用の削減に目が行きますが、建設資材や、軽量化を目的としてプラスチックの利用を増やす自動車なども無関係とは言えません。

 EUの他にも、米国カリフォルニア州では2016年、米国の州として初めてプラスチックバッグ(1回利用のレジ袋)を禁止しました。1年が経過し、当初反対派が訴えていた、店頭での混乱や袋の繰り返し利用による健康問題は出ていないと言われています。途上国でも、ケニアで2017年、世界で最も厳しいと言われる罰則付きの規制が導入されました。レジ袋の製造、販売、国内への持ち込みを行った場合、最大で38千ドルの罰金または4年間の禁固刑が科される内容です。同国では、放置されたプラスチックごみを家畜や他の動物が食べてしまい、体内に蓄積されることが非常に懸念されていますが、廃棄物処理システムが十分ではないこともあり、入口で規制しようという方向に至ったと考えられます。

 いずれの動きも、将来にわたって日本企業が無関係だとは言い切れません。規制対応コストの増加と受け止められることが専らでしょうが、新たな事業機会の誕生として、今後の市場の牽引する企業が現れてくるのなら、注目に値する存在となるでしょう。

(注1)駐日欧州連合代表部 発表資料「EU News 8/2018 ストラスブール」
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