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アジア・マンスリー 2017年1月号

【トピックス】
変化する韓国の輸出構造と今後の課題

2016年12月27日 向山英彦


韓国では2年連続で輸出額が減少する見込みである。その一方、ベトナム向けの増加や新規輸出品目の登場など新たな動きがみられる。輸出拡大の取り組み強化とともに、新

たなリスクへの対応が課題になっている。

■3年連続で減少する対中輸出
韓国の輸出額(通関ベース)は2015年(前年比▲8.0%)に続き、16年(1~10月)も▲8.0%と、2年連続で前年比マイナスとなる見込みである。これは、最大の輸出相手先で

ある中国向けの減少によるところが大きい。2000年代前半は中国の高成長に支えられて対中輸出額が著しく伸びたが、14年▲0.4%、15年▲5.6%、16年▲12.0%と、3年連続

で減少し、しかも減少幅が拡大している。

対中輸出の減少要因には、中国の成長減速に加えて、中国における急速な国産化(地場企業と外資系企業による)に伴い、韓国からの中間財輸出が減少していることが指摘で

きる。例えば、ナイロンの原料となるカプロラクタムの韓国からの輸出は近年ほぼゼロになった。また、液晶パネルは、中国企業が生産を急拡大していることと、韓国企業が

現地生産を開始したことにより、輸出額が減少している。

3年連続で対中輸出が減少したこともあり、韓国の対中輸出依存度(対中輸出額/輸出総額)は13年の26.1%から16年に24.9%へ低下した。ちなみに、日本の対中輸出依存度

は、中国での生産コスト上昇と反日デモを契機に「チャイナ+1」の動きが広がった結果、11年の19.7%から16年に17.3%へ低下した。

韓国でも、企業が過度な対中依存の是正を目的に生産拠点と輸出先の多様化を進めていること、また、韓国政府のTHAAD(戦域高高度防衛ミサイル)の配備決定を契機に、中

国で韓国製品に対する事実上の輸入規制が強まっていることなどを勘案すると、対中輸出依存度は今後も徐々に低下していく可能性が高い。

■増加する対ベトナム輸出、新規輸出品目
対中輸出額と対照的に、対ベトナム輸出額は増加基調で推移している(右上図)。同輸出額は15年に続き、16年も2桁の伸びとなり、15年以降ベトナムが韓国にとって4番目の

輸出相手先になっている(次頁上表)。輸出総額に占める割合は16年時点で6.5%である。

対ベトナム輸出が増加した背景に、韓国企業による投資の拡大がある。大手のエレクトロニクスメーカーがスマートフォンや家電製品などの工場を相次いで設立したほか、鉄

鋼メーカーが冷延鋼板やステンレス鋼板の生産を開始した。こうした現地生産の拡大に伴い、韓国から中間財や資本財の輸出が誘発されているほか、現地市場向けの消費財の

輸出も増加している。

韓国の対外直接投資額(韓国輸出入銀行データ、実行ベース)の推移をみると、対中投資額が減少傾向にあるのに対して、対ベトナム投資額は安定的に推移しており、最近3

年間の合計額では、ベトナムが米国、中国につぐ3番目の投資先となっている(ベトナム側の統計では、近年韓国が最大の投資国)。

対ベトナム投資が増加した要因として、中国と比較して労働コストが低廉であるうえ、一定の人口規模(9,000万人強)を有しているため、生産拠点ならびに市場としての魅

力があることが指摘できる。また、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟国、ASEAN経済共同体の一員であることも投資の増加に一役買ってきた。ASEANの域内人口はEUを上回る6

億2,000万人である。

他方、輸出品目においても、近年変化が生じている。韓国では「13大輸出品目」(船舶、無線通信機器、一般機械、石油化学、鉄鋼製品、半導体、自動車、石油製品、平面デ

ィスプレイ、繊維類、家電、自動車部品、コンピュータ)が全体の約8割を占める。15年の伸び率は▲9.4%と、全体の伸びを下回ったが、このうち「新規有望輸出品」である

OLED(有機ELディスプレイ)、SSD(ソリッドステートドライブ)はそれぞれ+25.0%、+26.6%となった。また、「5大有望消費財」(農水産物・食品、化粧品、ファッショ

ン衣料、生活・乳児用品、医薬品)も比較的堅調に推移しており、とくに化粧品の急増が注目される。これらの新規輸出品目はまだ輸出全体をけん引する力にはなっていない

ものの、今後の成長が期待される。
■注意したい新たなリスク要因
韓国経済の活性化には、輸出の拡大が不可欠である。この点で、16年11月の輸出が3カ月振りに前年比プラスになったのは明るい材料といえる。ただし、中期的観点でみると

、中国企業が急速にキャッチアップしているため、製品の高付加価値化や新規製品の開発、新たな輸出市場の開拓にこれまで以上にスピードをあげて取り組むことが求められ

る。

また、世界的な保護主義の高まりや米国の通商政策のゆくえなど、新たなリスク要因にも注意する必要がある。トランプ政権の発足により、米国の通商政策が国益を優先した

二国間主義へ大きく舵を切る可能性が出てきた。とくに韓国が懸念しているのは、韓米FTA(12年3月15日発効)のゆくえである。トランプ氏は選挙期間中に「韓米FTAは壊れ

た約束であり、…」「韓米FTAによって10万人分の雇用が喪失した」と主張した。この主張に必ずしも客観的な根拠があるとはいえないが、韓米FTAに対して強い不満を抱いて

いる背景に、両国間の貿易不均衡と韓国側のサービス分野における市場開放の遅れがある。このため、貿易不均衡が顕著な自動車や鉄鋼などで不均衡是正への圧力、米国が比

較優位にある金融・サービス・法律などの分野で市場開放圧力が強まる可能性があり、その対応が韓国にとっての課題となろう。
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