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グリーンボンド/ソーシャルボンドへの注目

2016年10月31日 創発戦略センター、村上芽、黒田一賢


 グリーンボンドおよびソーシャルボンドに対する注目が国内で急速に高まっている。2014年の日本政策投資銀行、2015年の三井住友銀行に続き、2016年には複数の企業が発行した。日本政策投資銀行は2015年・2016年にサステイナビリティボンドも発行し、国際協力機構(JICA)は2016年にソーシャルボンドを発行した。日系企業としては、トヨタ自動車の米国金融子会社が、2014年以来3回、グリーンボンドを発行している。最近では小池百合子・東京都知事が関心を示していることが報道された。
 ただ、まだグリーンボンドやソーシャルボンドの具体的な中身については、日本国内ではよく知られていないというのが実情であろう。株式会社日本総合研究所では、三井住友銀行のグリーンボンドに関する環境負荷削減効果算出支援や、JICAのソーシャルボンドに対する日本語では初めてのセカンドオピニオン付与を手がけてきた。そこで本稿では、直近の市場環境を踏まえながら、この新たな金融商品の特徴をまとめることとしたい。

1.なぜグリーンボンド/ソーシャルボンドなのか
(1)グリーンボンド市場の拡大
 グリーンボンドとは、気候変動・水・生物多様性対策など、環境に好影響を及ぼす事業活動に資金使途を限定した債券のことを指す。環境事業向けの資金調達を行いたい、あるいは資金調達に応じてくれる投資家の幅を広げたい発行体と、環境に配慮していることをアピールしたい投資家のニーズが合致して、グリーンボンドは誕生した。当初の発行体は世界銀行等の開発金融機関に限定されており、ニッチな商品だった。
 他方ソーシャルボンドは、グリーンボンド市場の拡大とともに最近登場した金融商品で、福祉、教育、交通、住宅などより幅広い社会的課題解決型の活動のための資金使途を前提とする。サステイナビリティボンドと呼ばれることもある。グリーンボンド市場の方が、普及が先行しているため、本稿では以降、特段の理由がない限りまとめてグリーンボンドという用語を用いることとする。
 グリーンボンドの発行市場規模は、年々拡大している。2012年以前には、上述のとおり発行体の種類が限られていたこともあり、年間発行額も30億ドル前後で推移していたが、2013年に民間企業による発行が始まってから急成長した。特に2013年から2014年にかけては、115億ドルから370億ドルと3倍以上増加し、2015年には418億ドル(13%増)、2016年も9月までの時点で618億ドルが発行された(Climate Bonds Initiative調べ)。発行体別にみると、民間金融機関、民間企業、自治体の伸びが目立つ。民間企業では2013年のEDF(電力、フランス)による14億ユーロや、バンクオブアメリカ(銀行、米国)による5億ドルの発行などが、初期の大型案件として知られている。自治体では、ロンドン市やパリ市などの欧州の自治体や、コネチカット州やサンフランシスコ市などの米国の自治体が発行している(事例については後述)。

(2)グリーンボンドを支援する政府
 最近では、環境分野への資金供給を促進させたいと考える各国政府の積極的なバックアップも行われている。特に中国は、自国の環境容量が上限にあるという認識のもと、グリーンで持続可能な成長モデルへの変換を急いでいる。2014年には中国人民銀行と国連環境計画が共同で、中国のグリーンな金融システム構築のための14の提言を行っており、グリーンボンドの支援もそこに含まれている。また、2016年のG20は中国が議長国だったが、グリーンファイナンススタディグループを組成し、ここでもグリーンボンドを積極的に後押しする議論が行われた。
 中国以外にも、国連環境計画の2015年の調査によれば、米国カリフォルニア州、カナダ、インド、メキシコ、トルコなどでグリーンボンド開発委員会等が組織されている。
 日本でも、環境省の「グリーン投資促進のための市場創出・活性化委員会」により、「平成27年度グリーン投資促進のための市場創出・活性化検討会報告書~我が国におけるグリーンボンド市場の発展に向けて~」が公表されている。環境省は2016年度にも、日本版ガイドライン策定に向けた新たな検討会を設置しており、市場育成に何らかの好影響を及ぼす成果が期待されている。また、特に再生可能エネルギー等の特定の事業者が発行する「プロジェクトボンド」による資金調達に関しては、2015年4月に「グリーン投資に関する情報開示について(報告)」が公表されており、一定の指針とすることが可能だ。

(3)マーク・カーニー発言
 さらに、こうした動きを後押しするのがマーク・カーニー氏の存在だ。カーニー氏は、英国の中央銀行であるイングランド銀行総裁で、同時に金融安定理事会の議長も務める。その金融安定理事会は2015年、気候変動が金融安定に影響を及ぼし得る新たなリスクの1つであるという認識を示した。情報開示に関するタスクフォースを組成するなどの新たな取り組みを進めており、カーニー氏は気候変動と金融の接点を語る上で欠かせない人物となっている。
 そのカーニー氏が2016年9月に行ったスピーチ「Resolving the climate paradox」の中では、経済を脱炭素化させるための手段としてグリーンファイナンスを主流化させる必要があるとし、「グリーンボンドへのクロスボーダー投資を促進させる国際的な協働」をひとつの案として示している。グリーンボンドを「新たなアセットクラス」と位置づけ、資金を調達して成長しながら低炭素な将来を実現するために格好の機会だと述べている。投資家にとってグリーンボンドを購入するという投資行動のメリットは、グリーンボンドが安定的で流動性の高い長期投資になり得ること、発行体にとってのメリットは、世界の債券投資家の100兆ドルに上る長期資金を呼び込める可能性があることだと整理されている。ただ、急成長していると言っても、年間発行額は債券市場全体の発行額の1%に満たないため、一層の後押しが必要だとしている。

2.グリーンボンドに対する投資家サイドの期待
(1)グリーンボンドの買い手
 グリーンボンドの最終的な買い手の顔ぶれや金額について、まとまった情報はまだない。しかし後述の「パリ・グリーンボンド宣言」に署名した27の投資家は、少なくとも積極的な買い手の代表格とみてよいだろう。スウェーデンの年金基金であるAP4の場合、2015年の1年間で14の新たな取引に参加し、29.4億スウェーデンクローネ(約412億円)を購入したと公表している。AP4によると、これは全世界のグリーンボンド発行額の約1%に相当するという(AP4ウェブサイトより(※1))。
 他方、グリーンボンドを一時的に引き受ける証券会社等(アンダーライター)の情報については、Climate Bonds Initiativeが、随時、市場調査を行っている。2015年のリーグテーブル(引受業者の引受実績のランキング表)によれば、上位にはバンクオブアメリカ・メリルリンチ、クレディ・アグリコル、HSBC、JPモルガン、シティ、モルガン・スタンレー、SEBなどが名を連ねている。この中で、あまり日本では知られていないのはSEBだろう。同社はスウェーデンの大手民間銀行の1つで、同社によると、グリーンボンドというコンセプトは2007~08年、同社と世銀が開発したと自負する、グリーンボンド市場での老舗プレイヤーである。2014年のリーグテーブルでは他社を抑えて1位になっており、特に開発金融機関とのパイプが太いと見られている。

(2)パリ・グリーンボンド宣言
 2015年12月9日、11.2兆ドルの資産を運用する投資家らにより、「パリ・グリーンボンド宣言」が採択され、27の投資家が署名した(本邦の投資家は含まれていない)。宣言では、気候変動は自らの投資先を含む経済社会の状況に深刻な影響を及ぼすとして、その対応に十分な投資が必要であるとしたうえで、投資商品としてのグリーンボンドを歓迎する内容になっている。さらに、各国政府による支援、明確で独立性のある業界標準、資金使途とインパクトに関する透明性の確保を求めることを併記した。
 この期間に同時開催されていた気候変動枠組条約締約国会議(COP21)に合わせた「宣言」には他にも様々なものがあるものの、特定の金融商品を冠にして、これだけの投資家が集まったということは、特筆に値すると考えられる。

(3)国内投資家による最近の動き
 日本国内の投資家は、実はグリーンボンド市場の初期の頃からの主要な買い手であり、日本の証券会社がグリーンボンド引受会社の上位に名を連ねていたこともある。グリーンボンドという画一的な表現よりもむしろ、引受証券会社にとって他社と差別化が容易となるような、独自の名称を付けて販売していた傾向が強かった。その後、欧米の証券会社の存在感が増しているように見受けられるが、最近では新たな動きもみられる。
 その背景には、日本でもESG(環境、社会、ガバナンス)投資への関心が高まっていることがあるだろう。2015年には年金積立金管理運用独立行政法人が責任投資原則(PRI)へ署名するなど、投資先選定にあたりESGに配慮した意思決定を行おうとする投資家の裾野は拡大している。
 実際、大手生命保険会社がグリーンボンド購入を積極化させ、債券の運用資産だけで1,000億円近くに達したといった報道もある。ESGに配慮した社債は、同じようにESGに配慮した株式よりも購入しやすいという立場の投資家もいる。2016年10月時点でPRIに署名している日本の投資家(アセットオーナー)は11あるが、購入が積極化する余地はまだまだあると考えられる。

3.グリーンボンドの発行体種別動向と主な特徴
(1)開発金融機関
 開発金融機関は現在のグリーンボンド市場の基礎を形成したという点で重要な発行体である。世界初のグリーンボンドが2007年欧州投資銀行(EIB)によって発行されただけでなく、国際的な金融危機の中にあっても、各国の開発金融機関による発行が相次いだことにより、従来の債券市場にグリーンボンドというカテゴリーが認知されたといっても過言ではない。他の主体の台頭に伴い、徐々に発行市場におけるシェアは低下しているものの、発行における償還年限、通貨、信用格付および資金充当先のプロジェクトの多様性を提供しているという点では引き続き重要な主体である。

(2)地方自治体
 開発金融機関と同様に公的な色彩の強い地方自治体であるが、発行主体として存在感を持ってきたのは2014年からと比較的最近である。フランスのイル・ド・フランス経済圏やスウェーデンのイエテボリが黎明期を支えた発行体であるが、グリーンビルディングや上下水道更新を目的としたアメリカの州や都市の発行市場への参入により、発行残高が急増した。ただしアメリカの州都市は後述するセカンドオピニオン(SO)や年次報告を省略する傾向も強く、透明性という点では改善余地が大きいのも特徴である。一方で地域創生や貧困層への対応という視点で、ソーシャルボンド発行に積極的という側面もある。

(3)民間銀行
 開発金融機関や地方自治体等の公的主体から民間主体にどこまでグリーンボンド発行が浸透するかが、グリーンボンド市場の試金石となる。そうした期待を背景に、銀行によるグリーンボンド発行事例の増加、およびその調達資金を原資する投融資を通じたグリーンプロジェクト拡大に注目が集まっている。また銀行グループに属する運用会社によるグリーンボンド投資が発行された債券の受け皿となっている側面もある。

(4)企業
 世界的な低金利を背景に企業による発行も増加している。これまで電力会社による再生エネルギー投資のための発行、不動産会社による省エネ投資のための発行が主流だった。しかし2016年2月の米国のアップルによるグリーンボンド発行は発行額もさることながら、多彩な資金使途、良質なセカンドオピニオン、年次報告に向けてのKPI(主要業績指標、再生可能エネルギーによる発電量等)の明示等、企業による発行の模範になるものとして注目を集めた。

4.「グリーン」をどのように担保するか:グリーンボンド原則(GBP: Green Bond Principles)
(1)グリーンボンド原則の生い立ちと主要4原則
 グリーンボンド原則とは金融業界団体の国際資本市場協会(ICMA: International Capital Market Association)が規定するグリーンボンド発行過程に関する指針で、2014年1月に初版が公表された。上述のようにグリーンボンド市場は短期間で急速に成長し、それ自体はESG投資を志向する投資家に歓迎された。一方でグリーンボンドは自主的にそれを名乗ることができ、それに紐づく環境関連プロジェクトが真に環境問題の解決に寄与するものであるかどうか怪しいものが含まれるようになった。こうした背景でグリーンボンドという「ラベル」の信頼性の低下が健全な市場成長の妨げになると考えたICMAはGBPを公表し、グリーンボンドの発行体に一定の情報開示を求めるようになった。

 GBPは以下の4原則から成っている。
【原則1】 調達資金投資先(グリーンプロジェクト)の要件
 グリーンボンドにより調達した資金は環境面での裨益を生むグリーンプロジェクトに投資をしなければならないが、どのようなプロジェクトへの投資を想定しているかはそれぞれの発行体が示すべきとしている。
【原則2】 対象事業プロジェクトの評価選定手順
 発行体はグリーンプロジェクトの基準を設けた上で、基準への適合を確認する方法とともに、発行体が投資において目標とする環境面での裨益を明示しなければならない。
【原則3】 調達資金の管理
 調達資金を他目的の勘定から分離管理する、もしくはそれに準じるプロセスを構築し、調達資金と対応するプロジェクトとの紐付けに信頼性を持たせなければならない。
【原則4】 報告
 資金使途やその投資額、期待される環境面でのインパクトについて年次報告をすべきである。

(2)改定による対象範囲拡大
 2014年の初版は非常に簡潔なものだったものの、年次総会の度に改定され、GBPは1)対象となるインパクトの明確化、2)外部評価手法の充実という点で関係者に有用なものとなってきた。2015年の主な改定点は1)【原則1】において、主要環境問題解決策がグリーンプロジェクトの種別として例示されるとともに、気候変動への適応も該当すると明示、2)【原則2】において、第三者によるレビューであるセカンドオピニオン(SO)を推奨、3)【原則3】において、独立した検証監査を推奨、の3点である。さらに2016年の改定では1)GBP4原則をソーシャルボンドまたはサステイナビリティボンド発行に適用するための「ソーシャルボンド発行体へのガイダンス」(Guidance for Issuers of Social Bonds)、2)SO監査に続く外部評価として格付についてのコメントが追加された。

(3)透明性確保のための取り組み
(3)-1 セカンドオピニオン(SO)
 GBPでは「コンサルタントによる審査」として、環境インパクト等に専門性を持つコンサルタントや調査機関にグリーンボンド発行に関する助言を、発行会社が利用可能な外部評価の一つとして取り上げている。さらに、慣行として一般化してきたセカンドオピニオン(SO)がこの区分に当てはまるとしている。SOはグリーンボンド発行体による説明に対して第三者が表明する意見書である。発行体は発行する債券をグリーンボンドとする理由、およびその資金流動プロセスを、対投資家の書面である目論見書、プレスリリース等で公表する。それに対して第三者がその説明の完全性、または潜在的なリスク等について独立した見解を示すことで、妥当性の有無を表明する。もちろんSO無しでもグリーンボンド発行は可能であるものの、SO発行によりその妥当性がより強調されると一般には考えられている。またSO提供会社はGBPその他のガイドラインの全部または一部を参照して意見表明するのが通例となっている。
 具体例として日本総研が提供したJICA債のSOを取り上げたい。当該債券はソーシャルボンドとしてのSOとしては国内初のケースであるとともに、GBP「ソーシャルボンド発行体へのガイダンス」を参照したSOとして世界的にも先進的な取り組みである。前々節で示した4原則それぞれについて、現在のJICAの取り組み、およびそれに対する日本総研の見解が綴られている。結論としてはガイダンスに沿った取り組みが概ねなされているものの、調達資金が充当される事業全体のインパクトの取りまとめおよび開示を今後の改善余地として指摘している。

(3)-2 検証(Verification)・認証(Certification)
 検証はGBP【原則2】【原則3】の発行体内部の手続きに関する外部監査のことである。グリーンボンドにより調達した資金の使途に対する外部監査で、GBP【原則4】に規定されている年次報告の一環として行われることが多い。一方認証は【原則1】のグリーン要件の妥当性についての外部機関による認証だが、1)前項のセカンドオピニオンが同目的の慣行として定着していること、もしくは2)検証と認証をセットで行う事例が多いことから、認証のみの好例は見当たらない。いずれも資金提供者およびその他のステークホルダーに対する、資金充当先やその状況についての説明責任を果たす上で重要である。ただしこれらはGBPで推奨されているものの、財務報告とは異なり発行体に裁量があり、行わないことも依然として多いことは留意すべきである。
 具体例としてEIBの「気候変動への認知度を高めるための債券(CAB: Climate Awareness Bonds)」についての取り組みを取り上げたい。前章で述べたようにEIBはグリーンボンド市場におけるパイオニア的存在であり、外部評価の取得という点でもその地位を築くために活動を継続している。調達資金の使途だけでなく、プロジェクトで得られた環境インパクトもKPMGによる監査を受けており、それを自身のニュースレター(英語では半年毎、日本語等その他の言語では年1回)で公表している。

(3)-3 格付
 格付はSOや監査等でもカバーしているグリーンボンドとしての妥当性を信用格付のような記号で示したものである。グリーンボンドについて知見を持っていなくても妥当性が把握しやすい反面、格付の元となっている情報や格付の定義が付与会社によって異なることに留意する必要がある。例えば格付の対象が債券そのものの場合と、債券に規定するグリーンプロジェクトの要件の場合とがある。
 具体例として格付投資情報センター(R&I)による「R&Iグリーンボンドアセスメント」の事例を取り上げたい。同アセスメントは、グリーンボンドによる調達資金が環境問題の解決に寄与する度合いによって、最上位のGA1からGA5までの5段階の格付を付与するというものである。R&IはGBP4原則への対応状況に加え、発行体の環境活動についてそれぞれ5段階評価を行い、それらを総合的に評価し債券の格付を決定する。

5.グリーンボンドの発行に向けて必要なこと
 では、実際にグリーンボンドを発行するためには何が必要か。ここまで、市場の原則や格付に至る様々な手法について述べてきた。しかし実際に発行を検討する際には、まずシンプルに、全体像を描くことから始めるのが有効だろう。なぜなら、グリーンボンド市場は、発行体と投資家が互いに「グリーンだ」と納得できるレベル感を探りながら発展してきたところに特徴がある。「認証がないとダメ」「格付がないとダメ」と頭から考える必要はなく、何の事業資金を誰から調達したいのか、どんなふうに「グリーン」なインパクトを出せるのか、柔軟に発想してみることが成功の鍵だといえよう。

(1)対象アセットの選定
 既存アセット(事業)でも、計画段階のものでも構わない。環境配慮型の製品を作るための工場の建設資金でも対象となり得る。
(2)グリーンインパクトの評価
 グリーンボンドと名乗るために唯一絶対必要といってもよいのが、どのように環境に好影響を与えるのかというインパクト評価だ。これまでの例では温室効果ガス(二酸化炭素)削減量が最もよく用いられているが、アセットによっては水や資源の量、当該活動によって恩恵を被る人の数、動植物の数や面積といった様々な「単位」が考えられる。
(3)資金の分別管理
 グリーンボンドによって調達した資金を、他の事業と混ぜてしまわないようにする仕組みを作っておくことが望ましい。調達主体が最初からSPCであれば、新たな仕組みの必要性は低い。
(4)投資家とのコミュニケーション
 対象アセットの選定や、グリーンインパクトの評価方法については、その妥当性が気になるところだが、最も影響力があるのは、投資家の選好だ。どんなにきっちりと資金を分別管理できて、一定のグリーンインパクトが出せると説明できる事業であっても、ターゲットとする投資家の考えに合わなければ、発行の実現は難しい。
(5)発行コストへの考え方
 「環境に配慮していることはよいことだ。だからグリーンボンドにすれば、より安く調達ができるのではないか」という考えは、断念する必要がある。「グリーンとの紐付け」を行うために、発行体にも投資家にも多少の、手間隙がかかるのがグリーンボンドだ。双方がコストを負担しあうので、仕上がりとして発行条件(クーポン水準など)は通常の債券と変わらない、というのが通例である。実際、先行事例でも、発行体にとって、低コストでの資金調達が実現したというよりも、購入してくれる投資家の顔ぶれが大きく広がったという点にメリットがあった、という評価が多い。

(※1)http://www.ap4.se/en/esg/climate-change-a-focus-area/green-bonds/

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