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Business & Economic Review 2012年5月号

【特集 アジア経済の現状と新たなビジネス展開】
アジア主要7都市ボリュームゾーン消費者の「より良い暮らし」へのニーズを探る-「アジア主要都市コンシューマインサイト比較調査」結果より

2012年04月25日 新角耕司、富田奈央子


要約

  1. アジア各国は近年急速に成長し、購買力を持つ「中間層」以上の消費者が増加している。日本企業がアジア消費市場への進出を検討する際には、国レベルではなく都市レベルの定量データが必須であるが、一般的に入手可能なデータは少ない。そこで総合研究部門 社会・産業デザイン事業部では、アジア主要7都市の「中間層」以上世帯の消費実態を把握するため、大規模な消費者アンケート調査を実施した。


  2. 調査の結果、アジア主要7都市の「中間層」以上世帯は、基本的家電製品や住宅など、一定の「モノ」をすでに所有しており、それらの現状の所有状況にかかわらず、新規購入意欲が東京よりも旺盛であることが明らかになった。さらに高額商品・付加価値商品への関心が高まりつつある。ただし、ニーズの強さや中身は都市によって多様である。


  3. 世帯構成については、各都市とも東京より多人数・多世代で居住している。世帯消費支出構成については、東京では住居関連支出比率が高いのに対し、ジャカルタ・ホーチミンでは食品、上海・ムンバイでは衣料品への支出比率が高い。その他支出では、上海では貯蓄・投資比率の、ホーチミンでは教育支出比率の高さが特徴的。


  4. 耐久消費財については、家電製品におけるいわゆる「三種の神器」をすべて所有する比率はジャカルタ以外で7割を超え、国レベルのデータとは大きな乖離がある。薄型テレビの購入意向もおおむね東京より高く、買い替え・買い増し意欲の高さがうかがわれる。自動車については各都市で5割以上が所有しており、非所有者の購入意向は各都市とも東京に比べ旺盛。


  5. 住宅については、アジア主要7都市の持ち家率は7割前後に達している。住宅所有意向も東京・ジャカルタ以外の各都市は旺盛で、とくにムンバイは過半数が3年以内の購入を予定。ただし東京・シンガポール・上海以外の5都市の購入予算は小さい。住宅購入時の最重視項目における「住宅価格」「生活環境」、今後希望する住まいにおける「郊外」「戸建」志向が、全都市に共通して見られる。これらは高度成長期のわが国で成功を収めた「ニュータウン」モデルの輸出可能性を示唆する。


  6. 高額商品・付加価値商品への関心が高まりつつあるアジア主要7都市の「中間層」以上世帯の消費ニーズには同質性と多様性が存在する。すでに普及が進んだ商品については来るべき付加価値競争への準備が、今後普及が進む商品については現地での価格感への対応が課題となる。どちらの場合にも国レベルではなく都市レベルでの深い消費者理解が不可欠である。
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