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CSRを巡る動き:経済産業省「長期投資研究会」で注目される政策対応の方向性

2016年10月03日 ESGリサーチセンター


 経済産業省は「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形投資)研究会」(以下、「研究会」)の第1回会合を8月25日に開催しました。同研究会は同年2~3月に開催された「持続的な価値創造に向けた投資のあり方検討会」(以下、「検討会」)の後継プロジェクトであり、その議論の動向に注目が集まっています。

 「研究会」における論点(案)(注1)は「検討会」の議題(注2)から大きく2点で進展しています。第1に、企業の様々な資本のうち、無形資産(人材や研究開発、知識・ノウハウ、ブランド等)に特に注目している点です。「検討会」では国際統合報告評議会(IIRC)の6つの資本を参考に幅広い資本の有効活用を念頭において議論がなされていました。その証左として「検討会」第2回資料では1)企業の将来投資促進、2)人材への投資、3)イノベーション(知的資本)投資、4)設備投資、5)社会的資本に対する投資、6)環境・エネルギー投資についての海外企業事例が取り上げられていました。しかし最終回である第3回ではその中でも無形資産投資の事例について1)根本にある企業理念、2)企業を取りまく環境の評価、3)中長期経営戦略の見立て、4)投資戦略の方向性、5)投資の形態、6)投資回収の見込み、の6つの視点で分析した結果が参考資料として提示されています。「研究会」ではその流れを引き継ぎ、無形資産投資を「価値創造につながる投資」の一つとして重視し、その促進のための議論がなされる予定です。ただし無形資産投資以外が排除されるわけではなく、企業における長期投資として他の要素も考慮される予定です。

 第2に「研究会」において政策対応の方向性が明確に議題となっている点です。「検討会」においては1)企業による情報開示、2)日本特有のコーポレートガバナンス、3)アナリスト体制・資格制度を含む長期投資の環境整備のあり方の議論がなされましたが、「研究会」ではさらに踏み込んで政策への示唆となる結果を期待しています。これは中長期的投資を促す政策対応について年度内に結論を出す、との「日本再興戦略2016」の姿勢を受けたものと考えられます。年度末に向けて政策対応に関する議論が深まり、企業・投資家双方に求められる対応が明らかになってくる可能性が高いと考えられ、その動向を注意深く見守る必要がありそうです。

(注1)「研究会」論点(案)
・持続的な価値創造につながる投資(無形資産等)のあり方
・企業における長期投資の判断、評価(ESG投資等)のあり方。価値創造につながる投資(無形資産等)促進に向けた課題や方策
・投資家が、中長期的な企業価値を判断する視点や評価のあり方。そのために必要な情報や対話のあり方。そのような長期投資を促進するための課題や方策。
・企業と投資家の行動や対話やコミュニケーションのあり方。
・上記を踏まえた環境整備等、政策対応の方向性等

(注2)「検討会」議題
・持続的な価値創造に貢献する投資のあり方とはどのようなものか
・企業(経営者)が、持続的な価値創造に向けて、様々な「資本」を有効活用し、未来に向けた投資判断を行うための方策とは何か
・投資家が、長期的な企業価値を判断する視点や評価軸は何か。そのために必要となる情報や対話のあり方はどのようなものか
・上記を踏まえた企業と投資家の行動や対話、環境整備のあり方はどのようなものか
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