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【次世代農業】
農業ビジネスを成功に導く10のヒント ~有望な新規事業の種はどこに埋まっているのか?~
第4回 ヒント(3)高機能性野菜について

2016年08月23日 各務友規


 前回のメールマガジンでは、「植物工場で何を栽培すれば儲かるのか」ということをテーマに情報をお伝えしました。今回は、昨今市場を賑わす「高機能性野菜」に焦点を当てます。

 近年、一般の野菜に比べて栄養が豊富に含まれる高機能性野菜の生産・販売が盛行しています。この背景には「少し高くても美味しいもの、健康に良いものを食べたい」という消費者ニーズの変化があります。さらに、植物工場等の栽培環境の制御技術が高度化し、野菜に含まれるポリフェノールなどの機能性成分の含有量の調整が容易になったことや、食品機能性表示の規制緩和に伴い、機能性表示の対象が野菜を含む生鮮品全般に広がったことが追い風となっています。

 とはいえ、果たして機能性野菜の価値が消費者に正しく認識され、実際に購買行動に結び付いているかどうかは定かではありません。物珍しさによる購買はあるものの、効果が分かりづらいためにリピート購入には至らないという声も聞こえてきます。では、どのように効果を伝えるのが良いのでしょうか。ここでは、消費者にどう分かってもらうか、どう興味を持ってもらうかという視点で、2つのアプローチをご紹介します。

 まず、効果の伝え方として最も大切なことは、当たり前のことですが、一般消費者が分かる言葉を使うことです。近年、「リコピン」などの機能性成分がようやく市民権を得た状況であり、特定の機能性成分の消費者の認知度は高くありません。したがって、一般消費者に馴染みの薄い機能性成分名を宣伝文句にするべきではありません。何やら難しそうな機能性成分と実際の効能のギャップを埋めるのが、食品機能性表示制度になります。同制度における生鮮品の登録は現状3件のみに留まりますが、制度の活用が消費者に分かりやすい価値訴求に役立つとともに、その積み重ねが制度自体の認知度向上にも貢献し、ゆくゆくは再び自社商品の価値に反映されます。

 もう一つは、消費者に価値を訴求する一連のストーリーを作り、情報発信を行うことです。野菜の機能性を高める手段はさまざまです。例えば、農業に関する部分では、(1)機能性成分を多く含む品種を使用する方法、(2)目的成分の合成を活発化させる栽培方法、食に関するサプライチェーン全体で捉えれば、(3)機能性成分の含有量の減衰を防ぐ輸送方法(注1)、(4)効果の発現しやすい人を予めターゲティングして販売する方法(注2)、(5)効果が発現しやすい食べ合わせを提案する方法があります。一般的には、(1)や(2)を通じて野菜の高機能性を実現し、生産者が単独でプロモーションすることが多いようですが、流通・小売業者等の他のプレイヤーと連携し、(3)や(4)や(5)も組み合わせることで、より効果的な価値訴求が可能になります。

 機能性野菜は、常日頃の食事を通じて気軽に摂取できることにメリットがあり、そこがサプリメントや医薬品との明確な差異となります。機能性野菜の需要を一層高めるためには、機能性成分だけを推すのではなく、日常の食生活に組み込まれた消費者のニーズに基づき、(制度の範囲内で)購買意欲を喚起する分かりやすい機能性の説明が重要です。また、食に関するサプライチェーン全体で、それらを補完するようなストーリーと情報発信の仕掛けを構築していくことも重要です。

 (注1):野菜は収穫した後も呼吸などの代謝を行っており、特定の機能性成分の分解が起こります。収穫時に高い機能性成分を保持していても、消費者の口に入るときに同様の組成を維持できているかは別問題です。一般的に、予冷や保冷によって野菜の代謝を抑え、鮮度を保つ工夫が行われています。中には、野菜の呼吸特性に応じて最適化された鮮度保持包装資材も開発されています。
 (注2):近年、ヒトの遺伝子検査が比較的安価なコストで行えるようになり、ヒト遺伝子の差異に応じて、特定の効果が発現する程度が予め予想できる機能性成分も出てきました。ヒトの遺伝子診断の結果に基づき、個人に最適なダイエットのアプローチを提唱している企業もあります。

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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