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Business & Economic Review 2006年01月号

【REPORT】
新たなフェーズを迎える情報サービス産業-業績停滞打破に向けた内外主要企業の取り組み

2005年12月25日 藤井英彦


要約
  1. 近年、情報サービス産業で企業業績の停滞色が次第に強まっている。わが国全体としてみれば、景 気回復下、企業業績の改善傾向が一段と鮮明になっているだけに、情報サービス産業での業績低迷が 際立つ。

  2. 1999年度以降の情報サービス産業での企業業績の低迷は、納期短縮、価格圧縮、品質向上に向けた 顧客ニーズの強まりが売上高の抑制とコスト増の両面に作用した結果と位置付けられる。ちなみに、 大手SI(System Integration)企業18社を対象に単独ベースでみると、2002年度以降、3年連続して大 幅な減収減益を余儀なくされており、情報サービス産業全体を上回る厳しい業況悪化に直面している ことが看取される。

  3. そうした情勢下、わが国SI企業は多様な対応策を打ち出している。a.顧客企業に対し、適切なリス クシェアリングに向けて契約の明確化を推進する一方、社内では、b.開発スタイルを見直し、基本コ ンポーネントをあらかじめ構築して開発の期間とコストを削減したり、c.プロジェクト・マネジャー の育成・増員を通じて開発力を強化するほか、d.国内外のアウトソーシングを活用してコスト削減を 進め、e.M&Aを成長戦略と位置付け積極的に推進する、などである。

  4. 一方、アメリカの情報サービス市場をみると、わが国を上回る深刻なダメージに、わが国より早い 時期から直撃された。アメリカでは2001年からソフトウェア投資額が前年比マイナスとなり、2003年 まで調整局面が続いた。情報サービス産業の雇用者数は2002年から2004年初頭まで前年比3~4万人 前後のペースで減少した。わが国と同様に納期短縮や価格抑制、品質向上に対するユーザー企業から の要請の強まりに加え、インド情報サービス企業の台頭のインパクトがそうした傾向に拍車を掛けた 結果である。

  5. こうしたなか、アメリカのSI各社は生き残りに向けて様々な対応策を打ち出してきた。a.専門性の 強化によって他社との差別化を図ることを目的とする業務のセグメント化、b.顧客基盤の拡充を目指 した成長戦略としてのM&Aの推進、c.インドを中心とするオフショア・アウトソーシングの活用、 などである。さらに近年では、価格最適化ソフトウェアなど、企業経営に直接メリットを及ぼしたり、 特定マーケットで必要とされるシステムや情報サービスの強化に向けた取り組みがM&Aを中心に推 進されている。

  6. 近年のアメリカにみられる通り、全体として景況が好転しても、顧客からの要請は今後一層厳しさ を増す公算が大きい。パソコン部門を切り離し、M&Aの戦略的活用によってさらなる競争力強化を 図るIBM社をはじめとしてアメリカの大手SI企業の取り組みは、今後も引き続き、わが国情報サービ ス関連企業に多くの示唆を与えよう。
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