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女性登用は業績にプラスに働くのか

2016年03月22日 林寿和


 2015年8月に成立した女性活躍推進法の民間企業に関する条文の施行が4月1日に迫っている。常時雇用する労働者が301人以上の全ての企業が、数値目標を公表した上で女性活躍に取り組むという大きな転換点を迎えることになる。これに先立って、「女性登用が業績にプラスに働くのか」をあらためて考えてみたい。

 日本総研では、国内外で発表された実証分析を網羅的に収集し調査を行った。
 文献収集にあたっては、
(1)2000年~14年までに英語または日本語で発表されたものであること、
(2)先進国の民間企業が分析対象であること(スタートアップ企業やベンチャー企業を除く)
(3)分析対象国で女性役員クオータ制(割当制)が導入されている場合、導入以後のデータが分析対象になっていないこと、
 を条件とした。
 その結果、条件を満たす文献43編が得られた(一覧は別表)。
 次に、この43編を分析結果毎に分類したところ、女性登用と財務指標との間にプラスの関係があると報告しているのは27編、マイナスは6編だった。前者が後者を大きく引き離している。女性登用と業績との間にはプラスの関係がありそうだが、“ニワトリが先か、卵が先か”の議論には注意が必要である。「業績が好調な企業の方が、(余裕があるから)女性登用を進めている」という逆向きの因果関係があるかもしれないからだ。
 幸い分析手法は進化を遂げており、“ニワトリ卵問題”(逆向きの因果関係の問題)の影響を差し引くことができる手法が開発されている。実際、43編中15編でこうした特別な手法が用いられている。この15編に限定してカウントしたところ、プラスが8編、マイナスが3編と、依然としてプラスが多い。多数決を取るのはやや乱暴だが、女性登用が業績にプラスに働く可能性は決して低くはなさそうだ(ただし、こうした特別な手法は、実際に使おうとすると追加でデータが必要になる。その妥当性等によっては、必ずしも厳密に“ニワトリ卵問題”に対処できていない可能性があり、留意が必要である)。

 さらに、おのおのの文献では実務にとっても示唆に富むさまざまな仮説が述べられている。その中から特に重要だと考えられるものを二つ紹介したい。
 一つ目は、女性登用が業績にプラスに働くためには、登用された女性の数が一定の規模に達することが必要だという仮説である(出典は別表の26番・32番)。裏を返せば、女性管理職が企業の中でマイノリティにとどまっている限り、業績への効果は期待薄だということを意味している。女性登用に関する数値目標を設定して数の増大を目指す意義は、ここにあるのではないだろうか。
 二つ目は、従事する業務内容によって業績への影響が異なるという仮説である(出典は別表の27番)。具体的には、機械的に右から左へと作業をこなしていくような業務よりも、創意工夫が求められるイノベーティブな業務の方が、女性登用を通じて得られる組織の多様性の効果が表れやすいという。これが本当だとすれば、管理部門など特定の部署に偏って女性の登用を進めたとしても業績への効果は実感しづらいということになるだろう。
 以上、女性登用は業績にプラスに働くのかに関する調査研究の一部を紹介した。さらに詳しく知りたい方は、おのおのの文献も直接参照していただくことを薦めたい。


■女性登用と財務指標関係についての文献一覧

※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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