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CSRを巡る動き:企業にも求められるLGBTへの対応

2015年09月01日 ESGリサーチセンター


 米国の連邦最高裁が6月、同性婚は憲法上の権利だと認める判決を出し、全米で同性婚が容認されることになりました。同性婚を認めた国としてはオランダが最も早く2000年のことで、国単位では欧州諸国が先んじて合法化してきました。米国でも、州によっては既に認められていましたが、それを全米に広げたのが先の判決であったということで大変注目が集まりました。

 こうした動きの背景にある、LGBTという言葉が定着しつつあります。LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取った言葉で、性的指向のマイノリティである人々のことを指します。国連ではLGBTへの差別や虐待などの人権侵害をなくすことに取り組んでおり、2011年には人権理事会が、性的指向と性同一性に関するものとしては初の国連決議を採択しています。国内では2012年に、電通ダイバーシティ・ラボが、人口の5.2%がLGBT層に該当するという調査結果を発表しました。この調査は2015年にも実施され、比率は7.6%と上昇しています。2015年には、3月に渋谷区が同性カップルに対して結婚に準じる関係と認め「パートナーシップ証明」を発行する条例を可決したことなどもあり、LGBTがメディアで取り上げられることが増えている状況にあります。

 企業は、このようなLGBTの人々の人権尊重に関する動きに、どのように対応していくことが求められているでしょうか。重要なのは、「差別をしない」という点です。2010年に発行したISO26000(社会的責任に関する国際規格)でも、違法な差別の根拠として「個人的関係」という表現を用いてLGBTの人権を意識しています。国連でも労働市場におけるLGBTの人々への差別を指摘していることから、まずは従業員に対する配慮から検討するのが取組みやすいと考えられます。日本でも、企業行動指針や人権方針、ダイバーシティ方針において、差別禁止や多様性尊重の文脈でLGBTを明記する企業も出てきはじめています。また、研修や勉強会を実施する企業も増えているとみられます。

 企業が直面しうる実務的な場面の例としては、同性婚の場合でも「結婚祝」などの福利厚生を適用するのか、適用する国としない国を分けるのか、といった問いが思い浮かびます。米国の連邦最高裁が同性婚容認に傾いたのは、婚姻に関わる様々な経済的利益に関する不平等の是正を重く見たためでした。それに鑑みれば、結婚祝の性格が「生涯のパートナーを見つけたこと」に対するお祝いであるならば、適用するのが欧米諸国の流れであるといっていいでしょう。しかし、アジアやアフリカ諸国ではいまだに抵抗感も強く、結婚祝一つとっても一体何を祝っているのか、考えてみる必要が出てきます。

 差別撤廃の次には、より積極的な対応という選択肢も可能です。人材の多様性確保について先進的な取り組みで知られるIBM社では、1984年にコーポレート・ポリシーに「性的指向による不当差別禁止」を盛り込み、多様性維持のための啓発プログラムに積極的に取り組んでいることで有名です。「文化的相違の受容と認知」に加え、「障がいのある人々およびLGBTの能力の最大化」を、グローバルな市場動向の反映として捉えています(注1)。LGBTの人々にとって働きやすい職場であることは、誰もが「自分らしく」振舞える職場であると解釈することができ、結果として誰にとっても働きやすい職場として、優秀な人材を引き付けるという循環を生み出せるのです。また、他社に先んじて積極的に取り組むことによって、LGBTのなかでも優秀な人材からのロイヤリティを得ることができるという可能性も高いといえるでしょう。日本でも既にLGBTをマーケティング対象と見て、関連消費を狙う動きも始まっていますが、製品・サービス上の単なるバリエーションとはせず、社内において多様性を受容する文化が醸成されていることを裏打ちとして、こうした商品開発が進んでいくことに期待します。


(注1) 日本IBM社ウェブサイト
(http://www-06.ibm.com/jp/employment/jp/life/modus/diversity.shtml)
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