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CSRを巡る動き:過熱化する「脱石炭投資」

2015年07月01日 ESGリサーチセンター


 2015年5月28日、ノルウェー国会のトップページにおいて、「ノルウェー政府年金基金―グローバル(GPFG)」の運用を巡って、石炭関連企業への投資からの撤退を与野党含め全会一致で決定したことが発表されました(※1)。GPFGとは、ノルウェーが権益を持つ北海油田からの収入を将来世代のために積み立てている年金基金の名称です。1990年に法律に基づいて設立され(※2)、ノルウェー財務省が所管し、投資運用に関する実務は中央銀行が担うなど、極めて高い公共性の下で管理運営が行われています。今回の決定(※3)は、GPFGの管理運営に関する財務省からの国会報告の中で、温室効果ガス排出に関係の深い企業からの投資の引き揚げに向けた基準作りを行う旨が報告されたことを受けて、国会がその大枠についてゴーサインを出したことを意味しています。ノルウェー国会は、収益の30%以上を石炭火力発電や石炭採掘に関係する事業から上げている企業を投資先から排除することなど具体案を提示するとともに、基準の具体化に向けて財務省・中央銀行・倫理委員会の三者が協力して検討を行うよう要請しています。

 石炭や石油などに関連する企業への非投資を巡っては、地球温暖化問題への関心の高まり背景に、市民団体などがキャンペーン活動を強めてきました。もっとも、こうした声にいち早く反応したのは年金基金ではなく大学でした。現在、欧米の大学を中心に、大学保有資産の運用において非投資を決定する大学が急増しています。環境保護団体「350」によれば、現在、世界の31の高等教育機関が石油や石炭関連企業に投資しないことを宣言しています(※4)。直近では2015年5月に、英オックスフォード大学が同様の決定を行っています。オックスフォード大学の場合、「Smith School of Enterprise and the Environment」という機関に所属する研究者グループが、将来的に予想される温室効果ガス排出規制の強化に伴って、炭鉱や油田、火力発電施設などの資産価値が急速に失われてしまう可能性を指摘し、こうした資産を「座礁資産」と名づけて、その影響について活発に研究活動を行ってきました。同大学による決定は、学生などからの要請だけでなく、大学における最先端の研究成果が大学保有資産の運用の考え方にも反映される形となりました。

 大学の間でいち早く広がってきた脱石炭投資ですが、年金基金への拡大はこれまでのところ限定的でした。しかし、GPFGの運用に関する今回のノルウェー国会の決定は、脱石炭投資の流れが年金基金にも確実に広がりつつあることを示しています。加えて、今回の決定が、倫理的な価値観のみに由来するものではないという事実も注目点といえます。ノルウェー国会は、GPFGを、環境政策や外交政策のためのツールとして活用するべきでなく、あくまで将来世代のための長期的な収益確保を目的として運営されるべきものであることを確認した上で、脱石炭投資の必要性を指摘しています。日本の厚生年金・国民年金に次いで、世界で2番目に大きい年金基金であるGPFGの脱石炭投資の動向は、今後、他の年金基金や受託運用機関における投資運用の在り方にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。


(※1)https://www.stortinget.no/en/In-English/About-the-Storting/News-archive/Front-page-news/2014-2015/hj9/
(※2)1990年の設立当時は石油基金(The Petroleum Fund)の名称で設置され、2006年にこれを引き継ぐ形でGPFGに改変された。
(※3)5月28日付けの発表は、正確にはノルウェー国会に設置されている財務委員会(Standing Committee on Finance and Economic Affairs)による決定である。
(※4)http://350.org/
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