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規制緩和を追い風にイノベーションを
2015年04月28日 井熊均
2015年度が始まり、日本経済は順調なスタートを切ったように見えます。株価は2万円を超え、賃金上昇もあり、経済的に一層の高揚感が出てくる可能性もあります。懸念されていたアベノミクスの第三の矢も成果を上げ始めています。農業分野では従来の政権が成し得なかったJA改革が実現される運びにあります。自分が関わっているエネルギー分野でも、改革の肝とされてきた発送電分離の方向性が明確に定められました。2年前に書いた本では、電力小売りの全面自由化は実現するものの発送電分離については予定調和に終わる可能性もある、と指摘していました。現政権が農業、電力という岩盤中の岩盤に深い杭を打ち込んだことは間違いありません。
メディアなどではまだまだ第三者の矢が足りないという指摘が多いようですが、岩盤規制に一穴が開けられた半面、民間側の姿勢が問われている面もあります。エネルギー分野では、固定価格買取制度により再生可能エネルギーの事業に予想をはるかに上回る企業が参入し、メガソーラーバブルが起こりました。国際レベルに比べて格段に高い買取単価が設定されたことが理由です。また、電力小売り全面自由化が目前に迫り、PPS(特定規模電気事業者)の申請が600を超えています。
規制緩和される市場に多くの企業が関心を持つのは望ましいことです。問題は、規制緩和を追い風にイノベーションを起こそうという企業より、官が定めた割高な単価が参入理由になるなど、官製市場依存の企業が多いように見えることです。
経済で政策にできることは限られます。2015年度の早い時期に、今こそ民間のイノベーションの力が求められている、という意識が浸透することを期待します。
※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。