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特別養護老人ホームにおけるホスピタリティを活かした介護を定着させるための支援のあり方に関する調査研究

2015年04月24日 福田隆士


*本事業は、平成26年度老人健康保健増進等事業として実施したものです。

事業目的
 特別養護老人ホーム(以下「特養」)の入居者の実態を見ると、要介護度が高い高齢者が多く、高齢者が最期の生活を送る場となっていることが多い。終の棲家となっている現状を鑑みると、利用者の状態の重度化が進んだとしても生活の質(QOL)を維持できるようにすることが必要である。特に団塊の世代が後期高齢者となり、これまで以上の超高齢社会を迎える2025年に向けて、介護サービスは一層の質の充実が期待されている。今後、特養においても、利用者にさらに行き届いたサービスが求められると考える。さらなる質の充実のためには、特養の経営者、リーダー、職員の各層が「介護は真のサービス産業である」と捉えたうえで、これまで以上に質の高いサービスを提供する側として、利用者に対してホスピタリティが発揮されるように運営を行うことが重要となる。
 本調査研究では、特養の経営・管理者層およびリーダー層を対象に、対人サービスにおける感性を磨いて気づきを促す研修プログラムを実施し、経営品質の向上や経営者の意識改革、リーダー層の効果的な成長に必要な支援のあり方を検討することを目的とした。

事業内容
 本調査研究は、一層の質的な向上を目指す特養が、各施設の固有の事情を考慮しつつ、利用者視点でホスピタリティの高いケアを実現することを目指すものである。本調査研究では、「ホスピタリティケア」という新たな考え方を設定し、研修プログラムの基本コンセプトや受講対象者、仮説・検証の視点等の検討および研修プログラムを設計・実施した。ホスピタリティの高いケアには、利用者個人の生活全般を捉え、状況を的確に把握し、対応していくことが重要であり、個別シーンに加え、利用者の方の人となりや過去の生活といった背景的側面を把握することも重要である。本調査研究では、このような考えやプロセス等を踏まえたケアを「ホスピタリティケア」と定義している。
 本調査研究で実施した主な事項は以下のとおりである。

(1)ワーキンググループでの検討
(2)文献調査・有識者ヒアリング
(3)研修プログラムの設計
(4)研修の実施
(5)効果検証・報告とりまとめ

事業結果
(1)調査研究の成果
 本調査研究で実施した研修について、終了時にアンケート調査および座談会形式での意見交換を実施した。研修内容の評価、研修の特徴・良かった点についての意見は以下のとおりであった。
 【研修内容の評価】
 ・ホスピタリティケアを理解することができた
 ・自施設でホスピタリティケアを実践していくイメージが湧いた
 ・PDCAサイクルを体験できる研修構成は今後の施設での取り組みの参考になった 
 【研修の特徴・良かった点】
 ・施設の管理者層、リーダー層の2名での参加形態は施設での取り組みが促進しやすい
 ・映像や画像、現場見学といった体験型のコンテンツの活用がホスピタリティケアの理解・促進に寄与した
 ・ディスカッションの時間を多く設けることで課題認識を深めることに寄与した

 以上より、本調査研究において実施した研修を通じて、ホスピタリティケアに対する理解の促進、自施設で展開していくことに対する具体的なイメージの醸成は、実現できたと考えられる。研修プログラムの全体構成および個別のプログラム内容に一層の改善余地はあるものの、意欲ある施設の前向きな取り組みを支援するという視点では十分な効果があったと考えている。
 ホスピタリティケアの実現には、まず各施設で利用者の生活を捉え、それに対応するための取り組みを始めることが非常に重要で、その取り組みを継続し、定期的に振り返り、改善を繰り返すことが肝要である。この点において、今回の研修は一連の流れを体験できるものとなった。

(2)今後の発展的展開に向けた提案
①研修プログラムの体系化
 今後、さらにホスピタリティケアを広く浸透させ、実践する施設を拡大していくためには、一層のプログラム充実が期待される。中長期的な体系づくりが重要であり、本研修を足がかりに、継続的な取り組み推進を支援し、ホスピタリティケアの実践レベルへのステップアップを図っていくべきである。

②プログラムおよびツール等のブラッシュアップ
 研修プログラムの構成、各個別プログラムにおける講義の内容、ツールの見直し等は必須である。今回の研修内容をベースに、より発展的なものを目指す必要がある。

③研修の継続的な開催
 本調査研究で実施した研修は、(1)で示したとおり一定の成果があったと考えており、今後、継続的かつ定期的に実施されることが望まれる。継続開催により、その効果・特徴および課題をより具体的に整理することで一層の研修プログラムの質の向上が期待され、研修プログラムの体系化・ステップアップに寄与するものと考える。

④先進的施設を中核とした継続的な研究組織の設置
 具体的な研修プログラムの再構築、より発展的な研修体系の構築に向けては、一層の検討が不可欠である。検討においては、すでに先進的な取り組み、ホスピタリティあるケアを実現できている施設を中心に進めることが効果的であると考える。意識の高い施設が集まり、ホスピタリティケアそのものと今後の発展、展開について継続的に議論できる研究会を設置することなども有効である。このような自発的な取り組みを出発点として、中長期的にホスピタリティケアを普及・促進するための担い手が増えていくことが期待される。

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
特別養護老人ホームにおけるホスピタリティを活かした介護を定着させるための支援のあり方に関する調査研究【報告書】 

本件に関するお問い合わせ
総合研究部門 主任研究員 福田隆士
TEL: 03-6833-5201   E-mail: fukuda.t@jri.co.jp
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