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2005年12月07日

人口動態から10年後の日本経済を読む ~来るべき上昇局面に行うべきことは何か~

要旨
1. わが国の景気は、「踊り場」局面を2005年央ごろに脱し、回復傾向を強める状況。もっとも、原油高、米国景気の不確実性、家計負担の増加など、不安材料がいくつか残る状況。本リポートではまず、2006年度景気について、これらのマイナス材料を乗り越えて回復基調が維持できるかどうかを検討。さらに、より長いタイムスパンで考えれば、バブル崩壊後の重石になってきた「三つの過剰問題」が解決される一方、日本経済は人口減少時代の本格的到来の入り口に立っている。現在がそうした「歴史的な転換点」にあるとの認識のもとで、中長期のパースペクティブでみた経済の姿についても展望。
2. 前提として海外経済環境について展望しておくと、グローバル経済は現在、①米国の住宅バブル、②原油高、③米中貿易不均衡、という「3つのリスクファクター」を抱える状況。もっとも、中国の供給過剰体質、人民元相場の安定、オイルマネーの還流を背景に「原油・資源高-物価・金利安定」という一種パラドクシカルな構図が成立するもとで、当面これらリスクの顕在化は避けられる見通し。この構図が崩れるのは、中国の供給過剰体質が解消され、世界的に金利が本格的に上昇する段階。
3. 2006年度の景気については、①米国景気が下期に向けてややスローダウンすること、②原油高が企業業績の下押し要因になっていること、③定率減税の縮減、社会保険料の引き上げなど各種家計負担が予定されていること、などにより回復ペースはやや鈍化するものの、④中長期的な観点から企業が設備投資を行うようになっていること、⑤所得・雇用環境が着実な改善傾向を辿っていること、を踏まえれば回復基調は続く見通し。
4. 人口動態から、中期的な経済の基調を展望すれば、①企業の人件費負担が軽減される一方、②団塊世代の退職一時金による消費浮揚効果、③団塊ジュニアの住宅購入増加とその耐久財消費への波及により、2007年以降も上昇局面。景気拡大は、大きな外的ショックが無ければ、コアの住宅購入年齢人口が増加傾向にある2010年ごろまで持続する見通し。しかし、2010年代に入ると、①団塊定年による景気浮揚効果・団塊ジュニアの住宅取得効果の一巡、②人口動態に伴う消費の基調的な増加率の低下、により、人口動態面からは逆に下押し圧力が掛かることに。さらに、北京五輪・上海万博後の中国経済の調整局面入りのリスクを勘案すれば、2010~11年をピークに日本経済は人口減少下で初めての景気後退局面入りする可能性。
5. もっとも、2010年代後半期以降、人口減少が一段と進み、年齢構成から試算した個人消費の基盤的な成長力は大きく低下していくものの、新たな成長フロンティアはなおいくつも存在。「アクティブ・シニア市場」「グローバル市場」「アウトソーシング市場」に着目した新成長フロンティアの開拓があれば、11~15年度の平均成長率は1%台を確保することは可能であり、世界経済が回復に向かえば2010年代後半に2%成長も達成可能。
6. 今後デフレ脱却が実現し、名目成長率が徐々に回復していけば、長期金利も上昇していくことは自然なプロセス。金利上昇は、支払い金利の増加を通じて企業業績を圧迫。半面、金利上昇はそもそも景気回復に伴うものであり、金利上昇ペースが景気回復ペースと見合っている限り、マクロ的には収益にはほぼ中立。しかし、中長期的に中国の供給過剰が解消し、わが国経常収支が縮小していけば、金利が名目成長率の拡大ペースを上回って上昇していくことも想定される。それだけに、基本的にはこれまでの物価安定・低金利の状態が維持される今後5年程度のうちに、企業は収益体質を一段と強化するとともに、政府は財政健全化の道筋を付ける必要。
7. 今後5年間に行うべき政策課題としては、①政府部門の分権化・外注化・効率化、②人的資本・知識資本の強化、③FTAを通じたアジア域内を中心とした内外統一市場の整備、④効率的で革新的な金融市場の創造、⑤就労促進的で効率的な社会保障システム、⑥税制体系の抜本的改革、の6点が柱。焦点の消費税率引き上げ幅については、歳出の徹底的な合理化を行えば、4%ポイントの引き上げで2010年代前半にプライマリーバランスの黒字化は可能。
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