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日本総研ニュースレター 2012年12月号

“ネガティブシニア”を減らすシニアビジネスへの期待

2012年12月03日 山田正孝


独自調査で分かったシニアライフの実態
 シニアビジネス、特に“アクティブシニア”と呼ばれるシニア層をターゲットとした事業開発が旺盛である。一方、当社が関東圏60歳以上の高齢者3,000名を対象に2012年8月に実施したアンケート調査結果によると、現代の高齢者像として一般的にイメージされてきたアクティブシニアとは全く異なる、“ネガティブシニア”と呼ぶべき層が、シニアの半数近くを占めることが明らかになった(下図)(※)
 ここで定義したネガティブシニアとは、友人との談話等も含む50以上のライフイベントに対し、今後お金も時間もかけたくないと考える、無関心・無気力な志向が強い高齢者層である。収入や資産が他の層と比べて著しく低いわけではなく、ただお金や時間をかけることに消極的なのである。
 ネガティブシニアの割合がこのままで推移するとすれば、人口の約1/3を高齢者が占めると予想される20年後には、単純計算で人口の約1/6~1/7がネガティブシニアで占められることになる。お金や時間を費やすことに無関心なことを否定するわけではないが、このような人口構成下では消費が多く発生しないことから、経済的な視点で好ましい状況とは言えない。将来の活力ある社会のため、ネガティブシニアを減らすことが必要であろう。

ネガティブシニア層を減らす企業活動への期待
 今のところ、ネガティブシニアに陥る理由は正確には分かっていないが、ネガティブシニアは何事にも関心をあまり持たない人々であるため、一度なってしまうと消費を伴うポジティブなライフスタイルに戻りにくいと考えられる。従って、ネガティブシニアを減らすには、ネガティブシニアに陥らせないようにすることが有効といえよう。



 各種調査結果から、70歳までに何らかのコミュニティに関わっていると、70歳以降もポジティブライフ層にとどまり続ける傾向にあることが判明している。つまり、ネガティブシニアに陥らせないためには、コミュニティに関与させることが有効と考えられるため、そのきっかけとなる、シニアに適した出会いや楽しく過ごせる「場」の整備を進めるべきである。「場」は、身近にあり気軽に訪れることのできるリアルな場所・施設と、そこに行けば何らかの魅力的なライフイベントを体感できるコンテンツを併せ持つことが必要である。当社のアンケート結果からも、このような「場」に対し、シニアから非常に強いニーズがあることが分かっている。特に、男性は退職後の60歳から70歳まで、女性ならば第一子成人後(40歳半ば~50歳半ば)にコミュニティを欲する傾向があり、この時期に重点的に機会を提供することが効果的といえる。
 コミュニティ形成のため、公的なコミュニティセンターなどが多くの自治体で提供されているが、一方で、民間ならではの創意工夫による、魅力的な「場」の創造・提供へのニーズは確実に存在する。企業にとっても、新しいコミュニティの開発そのもの、そして、開発したコミュニティを通じた自社商品・サービスへの誘引というビジネスチャンスが見込める。
 例えば、きめ細かな企画旅行を得意とするクラブツーリズムでは、シニアが飲み物を飲みながら気軽に集える「クラブツーリズムカフェ」を展開し、趣味に関する講座などを開催することでコミュニティの形成を積極的に図っている。そして、コミュニティに対する自社旅行商品への誘引はもちろん、コミュニティを活用した企業のシニア向けプロモーション支援なども事業化している。
 70歳に至るまで身近なところでコミュニティへの関与のきっかけがなく、結果ネガティブ層に陥るシニアが多数現れることも想定される中、ネガティブシニアに陥らせないようにするビジネスは社会的意義も高く、今後の活性化に期待したい。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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