オピニオン
女性活躍推進をブームで終わらせないために
2015年01月27日 小崎亜依子
女性活躍推進に対する注目が高まっています。第二次安倍政権では、女性活躍推進が政府の成長戦略に位置付けられました。待機児童・学童問題解消に向けた取り組みを加速化させるとともに、企業に対しては女性役員の採用や管理職への登用を行うよう、積極的に働きかけています。
こうした背景には、人口減少問題があります。2050年には総人口は1億人を下回るだけでなく、少子高齢化により生産年齢(15~64歳)比率は諸外国比で最低水準である50%近くまで落ち込むと予想されています。足りなくなる労働力を補うという点で、女性活躍推進の重要性はマクロ的には明らかです。
マクロ的に重要ではあっても、企業が女性活躍推進に取り組むことはそう簡単ではありません。企業が女性の登用を拡大させるためには、登用の仕組みばかりでなく、仕事のやり方まで変革させる必要があるからです。労働政策研究・研修機構が2014年に実施した 「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査結果」によれば、300人以上の企業に所属する管理職のうち、「未婚」と回答した人の割合は男性8.6%に対し女性42.3%、「有配偶・子あり」と回答した人の割合は男性78.6%に対し女性30.6%と、男女で大きな差があります。これら数値には、現在の日本企業で女性が管理職として働くことの困難さが現れています。長時間労働など様々な問題が背景にあると想定されますが、現状のままでは女性の登用を拡大させることはできません。
現状を変革し、女性の登用を増やしたとしても、経営への効果がすぐに出ないのであれば、足元の女性活躍推進は一過性のブームに終わってしまうかもしれません。ブームで終わらせないためには、取り組みを推進する企業が報われるような仕組みが重要です。内閣府は企業の女性活躍の「見える化」を行い、世の中が女性活躍推進の取り組みを評価しやすくしています。経済産業省はダイバーシティ100選やなでしこ銘柄に取り組み、表彰によって企業のブランド価値向上を支援しています。いずれも、取り組みを推進する企業が報われる仕組みです。
同様の視点から、創発戦略センターでは、企業の女性活躍推進の取り組みをスコア化し、投融資に活用してもらうことを実践しています。グループの三井住友銀行は、女性活躍推進を進める企業を応援することを目的とし、今年1月に「SMBCなでしこ融資」の取り扱いを開始しました。創発戦略センターはその評価を担当します。
表彰や評価によって、取り組みを推進する企業が報われ、いずれは実質的にも高い経営効果を生むようになれば、迫り来る人口減少問題も跳ね除けることができるかもしれません。
※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。