IKUMA message
今こそ、地球温暖化対策の議論を
2015年01月27日 井熊均
今回が2015年初めてのメルマガになります。
今年もよろしくお願いいたします。
アベノミクスの行方、国際リスクへの対処等、日本には重要な課題がたくさんありますが、今回は地球温暖化対策の話をしようと思います。昨年、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)は第五次評価報告書を公表しました。7年前の第四次評価報告書に比べても、地球温暖化の現状について深刻で厳しい評価が示されています。それは、この7年間、地球の気候が確実に変化し、従来とは違う極端な気候の発生頻度が増加している、という一般国民の認識と合致するものです。しかし、第五次評価報告書に関する国内の関心は、7年前とは比べ物にならないくらい冷めているように見えます。メディアの取り上げ方も低調です。
日本で地球温暖化の議論が盛り上がらないのは、原子力発電の方向性が決まらないため、政策サイドとしては日本としての目標を設定できない、有識者やメディアにおいては原子力発電と温暖化対策についての態度を決めきれないから、という意見があります。しかし、必ずしもそれだけではないように思います。
世界では、これまで総量削減目標を拒んできたアメリカと中国が総量削減の目標を提示するとされています。そうなれば、地球温暖化の国際的な議論の新たなパワーバランスができることになります。世界から認められる目標を提示できなければ、日本は良い議論のポジションを取れません。
省エネルギーを含む低炭素への取り組みは、これまで日本の産業の競争力の底上げと豊かな環境作りにつながってきました。国内での無関心が続き、国際的な議論での新たなバランス作りで出遅れることは日本の成長に影を落とすことになるでしょう。東日本大震災以来の呪縛から脱し、新たな議論が始まることを期待します。
※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
■ 最新の書籍
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