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タイのエコインダストリアルタウン開発の実現に向けて

2014年09月02日 副島功寛


 8月3日、タイ工業省が重点施策として掲げるエコインダストリアルタウン開発(以下、EITD)に関するオープニングセミナーが首都バンコクで開催されました。セレモニーやプレゼンテーションには、タイ工業省や各県の行政組織、コミュニティの代表をはじめ600人を超える出席者が集まり、数多くの関連グッズも配られるなど、官庁主催とは思えない豪華な政策プロモーションが行われました。今後は、EITDに関する5年間のマスタープランづくりが行われ、パイロットプロジェクトが立ち上がる予定です。

 タイは現在年率4%を越える堅調な経済成長を実現する一方、経済成長に伴う環境汚染の発生が、住民による抗議行動をもたらしています。タイ工業省はこれまでも工業団地のエコ化に関する政策を掲げ、マプタプット工業団地をはじめとした深刻な環境汚染に対処してきましたが、その実践にいよいよ本腰を入れ始めています。2015年を目途とした統合アセアンの盟主を狙うタイにとって、産業と住民の共生を図り、ASEAN諸国が今後遭遇する課題にいち早く対応することが不可避との意識からです。

 一方、経済成長がもたらした住民意識の高まりは、各県における環境問題への抗議行動をもたらしました。今タイ工業省がエコインダストリアルタウン開発に取り組むのは、2015年を目途とした統合アセアンの盟主を狙うタイにとって、産業と住民の共生を図り、ASEAN諸国が今後遭遇する課題にいち早く対応することが不可避との危機意識からです。

 エコインダストリアルタウンという言葉が使われているのは、工業団地内での環境対策の高度化に加え、コミュニティと一体化している中小工場までを含めた環境対応が求められているためです。昨今では、工業団地の周囲に分散する多数の中小工場からの環境汚染が問題となっています。規制とインセンティブといった政策的対応を駆使しながら、インフラ等への投資事業を組み合わせることで、中小工場の課題を克服し得る環境整備を進めるべく、現地で議論が重ねられています。日本でも1960年以降、北九州市をはじめとした各地域が同様の課題に直面し、時間をかけて克服してきました。タイは日本の事例に学ぶことで、より短い期間での実現を目指しています。

 当社は現在、EITDに関するタイ側との議論に参加し、日本の経験をタイでの実践に活かす活動を支援しています。EITDはタイの持続的な成長と競争力確保に必要な取り組みであり、タイの成功事例は結びつきを深めるASEAN諸国に広がります。日本の歴史や政策に対する理解を深めながら、現地に即した政策、事業のあり方を見いだし、日本とタイ、およびASEANとの関係強化の一助となる活動にしたいと考えています。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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