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CSRを巡る動き:証券取引所によるESG情報開示促進策の持つ可能性

2014年05月01日 ESGリサーチセンター


 証券取引所が主導する、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)情報の開示を促進するための取り組みが大変活発になっています。
 
2010年には、南アフリカのヨハネスブルグ証券取引所が、上場企業に対して統合報告書(IR: Integrated Reporting)の開示を義務付けました。統合報告書とは、長期的な企業価値創造のプロセスを、財務情報やESG情報を用いて説明する報告書のことです。財務報告書ともCSR報告書とも異なる新たな報告書で、ESG情報などを考慮する長期的視点を持つ投資家向けに提案されているものです。
また、2011年には、ブラジルのボベスパ証券取引所が、Report or Explain(ESG情報に関する報告書を開示せよ、もしくは開示しない理由を述べよ)という取り組みを開始しました。取り組みは義務ではなく企業の自主性に委ねられていますが、Report or Explainの取り組みの結果、ESG情報に関する報告書を開示する企業は飛躍的に伸びています。2012年には203社だったのが、2013年には293社となりました。
証券取引所がESG情報開示を促進する主体にすべく、2009年には「持続可能な証券取引所イニシアティブ(Sustainable Stock Exchange Initiatives)」を国連が開始しました。このイニシアティブは、投資家、政策当局、企業が共同で学習し合うプラットフォームの役割を担っており、上述のヨハネスブルグ証券取引所、ボベスパ証券取引所などの新興国の取引所に加えて、NASDAQ やNYSE Euronextの先進国の取引所など、計9つの取引所が参加しています。

上記の持続可能な証券取引所イニシアティブに参加している日本国内の取引所はありませんが、上場企業のESG情報促進に向けた取り組み、特にSの構成要素の1つである女性活躍支援の取り組みに関する情報開示を促進する動きは、わが国でも進展しています。2013年4月には、東京証券取引所は、上場企業が証券取引所ホームページで開示する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」記載要領の一部改訂を行うことで、企業の女性活躍支援に関する取り組みの情報開示を促しました。2013年9月には、上場企業2,995社のうち、女性の活躍状況について記載を行っている企業は526社で全体の17.6%に達したとのことです(※)。それまでほとんどの企業が「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」上で女性活躍支援に関する取り組みを開示していなかったことを考えると、急速に開示が進んだといえるでしょう。

 このような証券取引所が主導する企業のESG情報の開示の取り組みは、ESG情報の利用者である投資家の関心をより高めることになるでしょう。国連の持続可能な証券取引所イニシアティブにおいては、投資家は重要なステークホルダーに位置づけられていますし、証券取引所のホームページは多くの投資家にとって身近な情報ソースの1つのはずです。楽観的との批判を怖れずにいえば、取引所の情報開示促進策により企業のESG情報開示が進み、多くの投資家がそれらを利用し始め、先進的な取り組みを行う企業が投資家に高く評価されるという好循環が生まれる可能性は大いに高まってきているといえるでしょう。
 
※内閣府男女共同参画局開示データより
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