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統合報告で問われる企業の情報開示のあり方

2013年11月06日 長谷直子


 企業の情報開示に新たな動きが出ている。企業はこれまで、有価証券報告書や年次報告書などを通じて財務情報の開示を行ってきた。それに加えて、環境や社会的課題への対応や企業統治の在り方といった非財務情報の開示を要請する動きが拡がっている。その一つに、統合報告(Integrated Reporting)という、財務情報と非財務情報を一体化させて企業価値を説明しようとする新たな報告枠組みがある。

 統合報告は、IIRC(国際統合報告評議会)という団体がその枠組みを検討中で、現在公表されている草案によれば、企業は「財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本」の6つの資本と事業活動との関係性を把握し、それが中長期的な企業価値にどのように結びついているかを説明すべきとされている。統合報告に関するフレームワークは2013年12月に第1版が公表される予定だが、この動きを先取りして既に、南アフリカのヨハネスブルグ証券取引所では、2010年から上場企業に統合報告の提出を要請している。英国でも、「Strategic Report」という新たな報告枠組みが10月から始まる。企業はこの中で、重要なリスクや将来見通しの分析を含め、戦略、ビジネスモデル、環境、社会、コミュニティと人権に関する情報、企業統治に関する重要情報を開示することが求められている。

 なぜ企業に非財務情報の開示を求める動きが拡がっているのだろうか。それは、企業の長期的な将来性や成長性を見極めようとした時に、これまでの財務情報だけでは適切に判断できないことが分かってきたからだ。例えば、企業の事業活動により引き起こされた環境汚染によって地域住民に損害賠償を支払わなければならなくなり、業績に深刻な影響を及ぼすといった事態が実際に起きている。逆に、環境問題をビジネスチャンスとして捉え、環境配慮型製品・サービスの提供を通じて業績を伸ばす企業もある。

 環境問題などの先行きが見通しにくい課題が深刻化する中、「長期的な企業価値を測る指標」として非財務情報を捉える動きは、今後さらに拡がるだろう。企業はこれまでもCSR報告書等で非財務情報の開示を行ってきたが、長期的な企業価値との関連性を意識して開示できている企業はそれ程多くないのではないだろうか。いま一度、非財務情報の開示の意義を捉え直す必要が出てきたと言える。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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